【高校野球】前田悠伍の再来か!? 聖隷クリストファーの2年生左腕・髙部陸が圧巻の投球で悲願の甲子園まであと1勝 (2ページ目)
試合後、聖隷クリストファーの上村敏正監督に「髙部くんは全開でしたね」という質問が飛んだ。ところが、68歳のベテラン指揮官は「そうかな?」と首をひねり、こう続けた。
「今日は意外とそうでもない。この前(7月24日の準々決勝・御殿場西戦/9回8安打6三振1失点で完投勝利)のほうが全開でしたよ。今日は余裕を持って投げられたから、逆に三振が取れたんじゃないかな」
筆者は2025年のドラフト戦線に挙がる、主だった高校生左腕を取材してきた。その好素材たちと比べても、髙部の実力と潜在能力はトップクラスと断言できる。
残り1年間の高校生活を大過なく送れたら、前田悠伍(大阪桐蔭→ソフトバンク)クラスの存在になるだろう。本人が高卒でのプロ入りを希望すれば、当然ながら2026年のドラフト上位候補になる。
【打てれないストレートの秘密】
試合後、入念なケアを終えて報道陣の前に現れた髙部は、穏やかな微笑をたたえていた。パッチリとした二重まぶたの甘いマスクで、もし全国デビューを果たせば人気が沸騰しそうだ。
なぜ、ここまで驚異的なストレートが投げられるのか。そう尋ねると、髙部は独特のリリース感覚を披歴した。
「ボールを指で転がして、弾くイメージです」
転がして、弾く......?
理解できずに戸惑う筆者を見て、髙部は優しく自分の手を使って実演してくれた。
髙部のイメージだと、左手で握ったボールをリリースの瞬間に指先まで転がし、最後に弾いているのだという。しつこいようだが、あくまでも「イメージ」の話である。
「小さい頃に親から教わって、それからずっと投げ方は変わっていません」
この日の出力のパーセンテージを聞かれた髙部は、「70〜80パーセント」と答えている。上村監督の証言と符合するが、ほどよく力が抜けたことで、好結果につながったのだろう。
この日、髙部がストレート以上に手応えを得たのは、変化球だった。
「変化球が全部冴えていて、ストレートだけで押すピッチングじゃありませんでした。いろんな球種を使って、的を絞らせないピッチングがしたかったので、よかったです」
2 / 3