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佐々木麟太郎がスタンフォード大学で見つけ始めた新たな野球観と人生観「価値観と考え方が変わり、視野が広がった」 (2ページ目)

  • 山脇明子●取材・文 text by Yamawaki Akiko

【アメリカで発見し始めた新たな野球観と人生観】

 野球に関しては、大学最高峰のNCAA(全米大学体育協会)1部(D1)に来ただけに、レベルの高さは感じている。そんななか、より筋肉をつけ、体重も「高校卒業時より5~6キロ増えている」と言う。「ただ、力を上げるだけじゃなく、速さも上げるように意識しながらやっています。そこは、いい形にいってるんじゃないかなと思います」と自信を覗かせる。

 パワーに重きを置いたトレーニング指導をされていることも今の長打率(5割)につながっているが、「それが正解かわからないので、探り、探りです。野球は、探っていくことが大事。答えがどこにあるかわからないですし、本当に完成というわけでもないので、そこは常に探っています」と、どこまでも追求する姿勢を見せる。

 大学に来て、変わったことはほかにもある。

「練習は、日本に比べると短い。そうなるとやっぱり質を求めなきゃいけない。こっちの質とか効率はすごく高いという印象は、来た当初から受けてました」

 練習が短いことの意味も、すぐに理解した。

「どちらかと言うと、全体練習はチームの連係の確認作業。あとはみんな、どこで個人を高めるかと言ったら、やっぱり自分の練習であるのは間違いないです」

 それは、がむしゃらに練習するというだけではなく、いかに自らの体を知り、自ら管理するかも含まれる。

「オフは日によりますけど、休む時は休みますし、その時の自分自身の状況ですかね。何が必要なのか、何をやらなきゃいけないのか、何をやるべきなのかを考えて、オフも過ごしています。休みが必要な時、体の回復、リカバリーが必要な時は休みますし、それよりも練習が必要と思う時は練習します」

 また、ルーティンは、作る必要はないと考えている。

「ルーティンはあまりこだわっていません。いい時、悪い時、調子って毎日変わるので。その時に何が必要なのか、今日は何が必要なのか、何をすべきなのかを考えています。

 人って日々、体調や感情の調子とか、メンタルって言うんですかね? 日によって違いますし、(長い)リーグ戦なので、日によって何が必要かというのは変わってくる。だから、その日に応じて、日々の感覚を見ながらやるようにしてます」

 佐々木は、このように自らの信念を持っている。同じ野球はとはいえ、違う環境のなかで、自らの考えを巡らせ、野球と向き合っている。英語のインタビューの受け答えは、まだ緊張しているようだが、日常生活ではもっと流暢に英語を話す。その秘訣は何なのか。

「私も最初そうでしたが、日本人って、どうしても間違えたら恥ずかしいというのがあるじゃないですか。そういうのは怖がらないようにしようと思ってやっています」

 いつも自信に満ちていて、たくましい佐々木だが、アメリカに来た当初はコミュニケーションについては落ち込んだのだという。

「ここに来る前、多少勉強していましたが、アメリカに来て、(喋りの)スピード感とか全然違って、全然ダメなのかと思って、最初は一気に絶望しました」

 それが今では、試合でチームメイトと同じように振る舞い、話し、声を出し、すっかり溶け込んでいる。

「今まで日本という世界しか見たことがなかったので、アメリカに来て、すごく価値観とか考え方が変わりましたし、視野が広がったなって思っています」

 アメリカに来て、まだ1年。佐々木は、さまざまな経験を通して、選択肢をどんどん増やしている。

 野球選手としても、人間としても−−。

著者プロフィール

  • 山脇明子

    山脇明子 (やまわき・あきこ)

    大阪府出身。ロサンゼルス在住。同志社女子大在学時に同志社大野球部マネージャーと関西学生野球連盟委員を兼任。卒業後はフリーアナウンサーとしてABCラジオ『甲子園ハイライト』メインキャスター、サッカーのレポーターなどを務める。渡米後は、フリーランスライターとしてNBA、メジャーリーグ、アメリカ学生スポーツを中心に取材。

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