走攻守の三拍子よりも和製大砲候補。「打てるだけの選手」でもスカウトが興味津々のワケ (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Okazawa Katsuro

 G.G.佐藤(元西武)が活躍していた頃、試合前のフリーバッティングが見たくて、開門と同時にスタンドに行ったことが何度かあった。とにかく、打球がすごかった。屈強そうな体躯でバットを振り抜くたび、打球は雄大な放物線を描き外野スタンドに着弾する。試合になると三振も多かったが、芯を食った時の打球は圧巻のひと言だった。そんな規格外のパワーを誇る打者が打線にいると、相手バッテリーへのプレッシャーはもちろん、ファンの期待も違ってくるはずだ。

 ドラフトまであと1カ月あまり。"和製大砲"の系譜を継ぎそうな素材はいるのだろうか。冒頭で名前が挙がった前川を筆頭に、盛岡大付の金子京介、小針遼梧、平内純兵の3人も可能性を秘めた強打者だ。

 ほかにも左打者では、前川と双璧といわれる愛工大名電の田村俊介も甲子園でホームランを放ち、強打者の評価を不動のものにした。

 右打者では、高校生トップクラスのバットマンと見ている市立和歌山の松川虎生、高校生離れの飛距離を誇る千葉学芸の有薗直輝、センバツでスカウトを虜にした三島南の前田銀治も将来性豊かな逸材たちである。

 大学球界なら、国学院大の山本ダンテ武蔵が面白い。今年春のリーグ戦で5本塁打の打ちっぷりには、単にスラッガーとしての成長だけでなく、「バットマンとしてメシを食っていくんだ!」という覚悟のようなものを感じた。

 また、上武大のブライト健太は三拍子揃ったプレーヤーとして注目されていたが、今年6月の大学野球選手権で2本塁打を放ち、長距離砲としての資質を見せつけた。

 このなかから、何人の選手が"和製大砲"としてプロの世界で輝けるのだろうか。それだけでなく、今は話題になっていないが数年の時を経て「こんな長距離砲がいたんだ」と心震えるようなスラッガーが台頭してくることを願いたい。

 山川にしても、佐野にしても、アマチュア時代はほとんど無名の存在だったのだから......。

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