大阪桐蔭エース松浦慶斗のセンバツとの違い。フォーム修正と西谷監督が評価したこと (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

「下半身を使って投げる」という意識から右ヒザを胸付近まで高く上げるようになり、ダイナミックなフォームになった。松浦はフォーム修正の効果をこう語る。

「しっかりと前でカベができるようになって、シュートする球や弱くなる球がなくなったので、すごくバランスのいいピッチングができるようになりました」

 東海大菅生戦の試合前には、「センバツの初回の4失点がよぎった」と松浦は明かす。立ち上がりには二死一、二塁のピンチを招いたが、5番の岩井大和を空振り三振に抑えてピンチを脱するとペースに乗った。

 前夜から雨が降り続き、足元の緩いマウンドという厳しいコンディションもあった。だが、松浦は「大会が雨で流れている間、自分たちもずっと雨の中での練習ができていた」と意に介さなかった。下半身主導のフォームを貫いた結果、「球速は出なくても抑えられた」と胸を張った。

 雨足が強くなった7回表。ボールの抑えが効かなくなった松浦は3点を失い、なおも二死二、三塁のピンチで東海大菅生の主砲・小池祐吏を打席に迎えた。

 マウンド上の松浦には、バックやベンチからかけられる声がよく聞こえていた。

「粘れ、粘れ!」

「ここ粘って、絶対に勝つぞ!」

 チームメイトの声をエネルギーに換えた。そして滑る指先で操作するのではなく、ここでも「下半身」の意識を崩さなかった。最後はカウント3ボール2ストライクから136キロのストレートをインコースに突き刺した。

 試合は8回途中降雨コールドのため7対4で大阪桐蔭が勝利した。試合後、報道陣から「春から成長した部分はどこか?」と聞かれた松浦は、このように答えている。

「『気持ちで負けない』という部分は絶対に変わっていると思います。ピンチでも落ち着いて、周りにも声をかけられるようになって、視野が広がったのかなと」

 松浦はコントロール以上に大切な、大阪桐蔭のエースとして必要なものを手に入れたのではないか。そう思わずにはいられなかった。

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