強力打線がフライアウトを連発。169センチの新田のエースが見せた非凡さ

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 静岡のエース・高須大雅は、静岡大会で37イニングを投げて1点も許さなかった。奪った三振は36個。1イニングにほぼひとつずつ三振を取った計算になる。身長192センチ、体重84キロ――ストレートの最速は146キロを誇る、プロ注目の好投手だ。

 夏の甲子園の第1日目。その高須と対戦したのは夏初出場の新田(愛媛)。強力打線が売りだが、愛媛大会ではチーム打率.284となかなか波に乗れなかった。

新田の岡田茂雄監督は愛媛大会の決勝戦を前に、聖カタリナ学園のエース・櫻井頼之介対策についてこう語った。

「うちは高知高校の森木大智くんと何度も対戦してきました。あの子は、バケモン。彼に比べれば、まだ戦いようがある」

 森木は高知大会決勝で明徳義塾に敗れて甲子園出場こそならなかったが、この世代を代表するピッチャーのひとりだ。森木との対戦経験のある新田のバッターたちは、春のセンバツで好投した櫻井をわずか2回でノックアウト。勢いをつけて甲子園に乗り込んできた。1番から3番に好打の左バッターを置き、4番、5番には長距離砲を据える。

 試合の主導権を握ったのは新田だった。2回ワンアウト一塁、三塁から8番の向井駿貴がライト前に落とし、エースが自らのバットで先取点を叩き出した。

チームに夏の甲子園初勝利をもたらした新田のエース・向井駿貴チームに夏の甲子園初勝利をもたらした新田のエース・向井駿貴この記事に関連する写真を見る この大会から背番号1をつける向井は、身長169センチ(49チームの「背番号1」の中で最小)、体重70キロ。ストレートの球速は135キロほど(この日出した136キロが最速)で、90キロのスローカーブ、115キロ前後のスライダーを駆使する、一見、どこにでもいるようなピッチャーだ。

 だが、静岡大会6試合でチーム打率.365だった静岡打線は沈黙し、5回までわずかヒット2本。4回、5回は6打者連続でフライアウト。静岡の選手たちは打球を打ち上げてベンチに戻ることを繰り返した。

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