2020.06.04

上林誠知に意地の3奪三振。浦和学院・
小島和哉が182球の熱投も涙

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

こんな対決あったのか!
高校野球レア勝負@甲子園
第4回 2013年夏
上林誠知(仙台育英)×小島和哉(浦和学院)

 死闘が終わり、帰路につくためにスタンドの通路に向かう観客たちは、みな一様に興奮が収まりきらないようだった。

 ふいに30歳前後のサラリーマンとおぼしき男性の嘆き節が耳に入ってきた。

「かわいい売り子の名前を忘れたじゃねぇか〜!」

 ぷっと吹き出すとともに、「それも無理はない」と納得してしまう試合だった。この日はプライベートでひとりの野球ファンとして観戦した私も、しばらく魂を抜かれたように呆けていた。

高校時代から天才的なバッティングを披露していた上林誠知 2013年8月10日、第95回全国高校野球選手権大会1回戦・仙台育英対浦和学院戦は、第4試合ということもあり、開始時刻は日が傾きかけた16時35分だった。

 浦和学院は同年のセンバツ王者。仙台育英はセンバツベスト8。実力校同士の好カードとあって、4万2000人の大観衆が甲子園に詰めかけた。仙台育英には高校球界屈指の強打者・上林誠知(現・ソフトバンク)、浦和学院には安定感抜群の左腕・小島和哉(現・ロッテ)とドラフト候補の対決も注目ポイントだった。

 とはいえ、朝8時からの第1試合から甲子園のスタンドに留まり、銀傘の日陰にならない炎天下で過ごした身としては、試合の最後まで集中力が持つか心配だった。試合前のシートノックはボーッと見て過ごし、「なぜ、仙台育英のライトは4人も入っているんだろう......」と、その時はどうでもいい疑問を抱いたことを覚えている。