盛岡四はマシン3台で佐々木朗希対策。効果ありもキレが異次元だった (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 迎えた夏。抽選会の結果、順当に勝ち上がれば四高にとって3戦目となる4回戦で大船渡と対戦することがわかった。及川監督の予言がほぼ的中した形だった。及川監督はあらためてこう言った。

「日本で一番のピッチャーに挑戦しよう」

 四高はさっそく佐々木対策に乗り出した。四高にはピッチングマシンが3台あり、それを駆使した。

 1台目は最速170キロまで出る「トップガン」と呼ばれる最新マシンで、160キロ以上にセットした。部員たちはマシンを設定しながら「本当にこんなボールを投げる人間がいるのか?」と、にわかには信じられなかった。

 2台目は変化球対策。佐々木の高速で大きく曲がるスライダーを想定して、130キロ台後半のスピードに設定した。

 そして3台目は四高のチームカラー同様にクセ者だった。3つのローターでボールを弾くタイプのマシンで、選手たちは「スリーローター」と呼んでいた。だが、このマシンは老朽化が進んでおり、下部のローターがうまくかみ合わないことがある。その際、ボールが速球ほど回転せずに鋭く落ちる現象が起きた。

 このスリーローターの特徴を生かし、佐々木のフォーク対策に当てたのだ。基本的には150キロのストレートが放たれ、ローターがかみ合わないときだけ鋭く落ちる。このボールは打とうとせず、見送れたら「ナイスセン(ナイス選球眼)!」と褒め合った。

 この3台のマシンによる特訓によって、四高の選手たちはだんだんコツをつかんでいく。当初はバットの芯を外して手をしびれさせていたが、次第に鋭い打球が飛ぶようになっていったのだ。横山はたしかな手応えを感じていた。

「スピードに慣れてライナー性の打球を打てるようになって、自信がついていきました。スイングスピードもどんどん上がっていって、130キロくらいの球は遅く感じるようになりましたね」

 2019年7月21日、四高と大船渡の4回戦は岩手県営野球場で行なわれた。試合前、及川監督は選手を前に「勝つとしたら3対2だ」とゲームプランを語った。

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