2019.10.14

盛岡四はマシン3台で佐々木朗希対策。
効果ありもキレが異次元だった

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

盛岡四が見た怪物・佐々木朗希(前編)

 今夏、佐々木朗希(大船渡)は投げずして岩手大会決勝で敗れた。最速163キロの怪物は、今年に入って投手として公式戦無敗のまま高校野球生活を終えることになった。そんな佐々木を土俵際まで追い詰めたのが、大船渡と4回戦で対戦した盛岡四である。盛岡四から見た佐々木朗希はどんな投手だったのか。盛岡四サイドの視点で、延長12回の死闘を振り返ってみたい。

小学生の時にも佐々木朗希と投げ合ったことがある盛岡四のエース・菊地芳 2018年夏の岩手大会を2回戦で終え、新チームが発足した夏のある日。盛岡四の及川優樹監督は選手を前に言った。

「来年の夏は、大船渡と3回戦でやるからな」

 予言じみた言葉に、選手は半信半疑だった。正捕手の横山慶人は「絶対ないだろう」という言葉を飲み込んだ。

 及川監督に確信があったわけではない。それでも「お互いに順調に伸びれば、ベスト8クラスで戦う可能性が高い」という計算があった。

 盛岡四の正式名称は「盛岡第四高等学校」。「だいよん」ではなく、「だいし」と読むのがポイントである。地元では「四高(しこう)」の愛称で親しまれる、県立進学校だ。

 国公立大への進学を目指す生徒も多く、学業面のハードルは高い。その一方で、野球部は1994年夏に甲子園に出場した実績がある伝統校でもある。そして新チームの四高は不思議な力があった。エース右腕の菊地芳(かおる)が「自分たちは歴代でも個性が突出した代らしいです」と語るように、部員は変わり者だらけだった。

 菊地が「誰がどう見ても普通じゃない」と語る左打者の高見怜人は独特の感性を持ち、天才的なバットコントロールを武器にする。3番・ショートを任される岸田直樹はいかにも線が細く頼りなく見えるが、スタンドまで放り込む意外な長打力がある。そしてエースの菊地にしても、捕手の横山に言わせれば「思い切り首を振って投げるのに、不思議とコントロールがいい」という変則的な一面があった。そんなひとクセもふたクセもあるチームが波に乗ると、凄まじい力を発揮した。

 春の県大会では、甲子園帰りの盛岡大付を3対2で破る番狂わせを演じ、準優勝。東北大会にも出場した。夏の岩手大会が開幕する前には、四高は優勝候補の一角に挙げられていた。