大船渡は佐々木朗希を育て、守った。登板回避よりも伝えられるべきこと (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 國保監督が起用しなかったことへの感想を求められると、佐々木はしばらくの間、うつむきながら押し黙っていた。そして言葉を選ぶようにして、「監督の判断なので、それはしょうがないです」と答えている。

 ほかにも「(登板回避を伝えた際)國保監督は笑顔で答えたと言っているが......?」という問いには首をかしげる仕草を見せ、「國保監督から学んだことは?」という問いには長い沈黙のあと「ちょっと今は言えないです」と答えた。

 悲願だった甲子園出場を逃した試合後だけに、気持ちを整理できないのは仕方がないことだ。頭では起用されなかった理由を理解しつつも、「投げたかった」という本音を必死に押し隠しながら受け答えしていることが伝わってきた。マウンドに立ちたい。それは投手の本能なのだ。

 一方で、國保監督が佐々木の体を気遣って決断したことについて問われると、佐々木は「ありがたいですし、そのぶん自分が将来活躍しなきゃなと思います」と感謝と決意を口にした。

 準々決勝の久慈戦の試合後には、佐々木は國保監督についてこうも語っている。

「チームメイトもそうだと思うんですけど、プレーしやすい環境をつくってくださって、自分がしたいベストなプレーができるように尽くしてくださっていると思います」

 こうした発言からも、國保監督と佐々木の間で信頼関係ができていることは明らかだ。投げられる、投げられないという認識に多少の齟齬(そご)があったとしても、すべては佐々木の「しょうがない」という言葉に収斂(しゅうれん)するはずである。

 ただし、國保監督の起用法について解せない点もある。それは準々決勝の久慈戦で好投した大和田健人、和田吟太の2人を決勝戦で登板させなかったことだ。久慈戦で大和田は7イニング(大会通算10イニング)、和田は4イニング投げているとはいえ、登板間隔は中2日空いている。

 國保監督はこう説明した。

「2人とも大会を通じて20イニングとか長い回を投げたわけではないですが、精神的な疲労もたまっていました」

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