2019.03.27

43年前との奇妙な縁。智弁和歌山
「名将」のバトンは受け継がれるか

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 昨年、夏の100回大会を終えた甲子園は今、”平成最後”のセンバツ大会で沸いている。そんな甲子園で、平成という時代を象徴する人物をネット裏で見つけた。

「ええボール放るなぁ。(昨年秋に)神宮大会で見た時は『速い、速い』と聞いていたらコントロールもええし、変化球もええなと思ったけど、今日も抜群や。こういうピッチャーは追い込まれたら打てんから、その前にどうするかが勝負。まあ、それが簡単やないんやけど。ホンマ、ええボールや」

 大会初日第3試合の星稜(石川)と履正社(大阪)の一戦。現役感が残る口ぶりで、大会屈指の好投手である星稜の奥川恭伸のピッチングについて語るのは、昨夏まで智弁和歌山を率いていた高嶋仁(72歳)だ。

昨年夏で智弁和歌山の監督を勇退した高嶋仁氏 甲子園通算68勝を挙げた最多勝監督は、春夏合わせて38回の出場で、じつに103試合も戦った。この春からは解説者としてネット裏に座り、球児たちの戦いに熱い視線を送っている。

「しゃべりはまだ慣れん。智弁学園(奈良)時代に1回だけ、夏の甲子園でゲスト解説をやったことがあるらしいんやけど、全然覚えてない。それに、もともと褒めることが苦手やし、思っていても言えないことがあるし……大変や(笑)」

 智弁和歌山の監督をしている時も、甲子園に出てない年は何度もゲスト解説の依頼を受けたが、放送席に座ることはなかった。

「甲子園で(解説者として)しゃべるということは、甲子園に出ていないということ。なら、しゃべる暇があったら練習せんと……」

 勇退後は講演活動や野球教室、取材などで忙しくする一方で、名誉監督としてチームとの関わりは続いている。

「ただ、僕がちょこちょこ顔を出すと、現場がやりにくいだけ。たまに行っても、気になったことをちょっと言うぐらいですよ」

 とはいえ、今回センバツに出場する智弁和歌山の選手は昨年まで指導していただけに、やはり気にかけている。

 その智弁和歌山の初戦は大会6日目、3月28日に熊本西と対戦するのだが、抽選会の日、この日程になった瞬間、軽い身震いを覚えた。