2018.09.02

ソフトバンク千賀もかつて愛用。
まさかの「天敵」で型付けするグラブ

  • 井上幸太●取材・文 text by Inoue Kota
  • photo by Kyodo News

「イソガイスポーツ」店長の磯貝善之氏

 その言葉とは、「商売を営む以上、"儲ける"ことから目を背けてはいけない」、「いかなるときも手を抜かない」のふたつだった。

「『儲』という字は『信じられる者』と書く。その言葉通り『人から信頼される、この人に任せたら大丈夫と思ってもらえるような人間になりなさい』というお話をいただきました。加えて、商売である以上は利益を出さなければ存続することが難しい。せっかくお客さんからの信頼を得ても、店が潰れてしまってはその思いに応えることができません。信頼を得て、それに応えるために店を続けていく。これがひとつ目の言葉です。

 もうひとつが、どのグラブ、どの作業に対しても絶対に手を抜かないこと。日々型付けをしている私たちにとっては数多くあるグラブの内のひとつだけれども、購入したお客さんにとっては唯一無二のグラブ。それを絶対に忘れるな、というのがふたつ目。研修を終えて長くなりますが、このふたつの言葉を忘れたことは一度たりともありません」

 イソガイスポーツの2代目にあたる磯貝。先代にあたる父親は、幅広いスポーツに対応する総合スポーツ店として経営していたが、自身が継ぐタイミングで野球専門店へと舵を切った。当時の碧南市で盛んだった少年野球の選手たちにグラブを販売するなかで、ある気づきを得る。

「少年野球の選手がすぐに使えるように、オイルで柔らかく加工したグラブを販売したんです。当時は"型付け"自体もよくわかっていなかったので、ただ柔らかくしただけだったんですが、すこぶる好評だった。そのときに『イソガイスポーツが生き残る術はこれだ!』と直感したんです」

 グラブへの加工方法を模索するなかで、湯もみ型付けの存在を知る。今でこそ広く知られるようになった湯もみ型付けだが、「革に水分は大敵」というのが当時の通説。しかしながら、磯貝の幼少期の記憶がその抵抗を取り払ったという。

「祖父の代は元々靴屋でした。祖父が革靴のソールを水につけて縫っていたのを、幼少期に見たことがあったんです。その記憶があったので、『世間でいわれているほど、水は大敵ではないんじゃないか』、『理に適った方法なのでは』と思いました」