履正社らしからぬ苦戦は吉兆か。打倒・大阪桐蔭への道筋が見えた (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Kyodo News

 あらためて、ここ10年の両校の夏の戦績を振り返ると、甲子園出場は大阪桐蔭の5回に対し、履正社は2回。ただ、履正社の安定感は特筆すべきものがあり、10年のうちベスト4以上は実に9回を数える。大会序盤での唯一の敗退は、大阪桐蔭と初戦対決で敗れた2015年のみ。

 しかも敗れた相手はほとんど大阪桐蔭で、それ以外の学校に負けたのは2009年のPL学園のみ。これは全国屈指の激戦区・大阪にあって、極めて秀逸にして稀な戦績といえる。

 そんな大阪桐蔭以外には"無敵"状態だった履正社だが、今年は初戦から苦戦。近年の大阪の戦いからすれば"大異変"と言えるが、そもそも今年はいつもと空気が違っていた。

 毎年、大会が近づくと"2強"の話題で持ち切りとなるが、今年は根尾昂(あきら)、藤原恭大(きょうた)を筆頭に注目選手が多く揃う大阪桐蔭の"1強"ムードが漂っていた。

 とはいえ、昨年秋、履正社が近畿大会で敗れた相手は、今年春のセンバツで大阪桐蔭と好勝負を演じた智弁和歌山。相手エースの平田龍輝から17安打、8点を奪うなど大乱打戦を演じており、智弁和歌山の高嶋仁監督も「打線なら(大阪桐蔭よりも)履正社の方が上とちゃうか」と語っていたほどだ。

 事実、濱内太陽、西山虎太郎、白瀧恵汰、筒井太成ら前チームからのメンバーに新戦力が加わった打線は高い攻撃力を持つ。

 ところが、春の大阪大会は4回戦で興国に完封負けするなど、自慢の強力打線は鳴りを潜め、チームも不安定な戦いを繰り返した。

「練習試合でも大差で負けたり、ここ数年にはなかったような戦いが結構ありました。だからこの夏、どう戦おうかと......頭が痛いです」

 岡田監督の不安は的中したが、その一方でチームに備わった大きな武器もあった。岡田監督は言う。

「こういう厳しいゲームをやっていると、当然、チームとしての一体感や粘りは増してきます。特に夏は、この粘りが大事なんです。粘り強く戦って、試合を積んでいくなかで選手もチームも成長していく。このようなケースはこれまでに何度もありました」

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