元ドラ1位選手が母校に指導者として戻ると、どんな仕事をするのか? (4ページ目)

  • 寺崎江月●文・写真 text & photo by Terasaki Egetsu

──強豪校に身を置いているプレッシャーはありますか? たとえば甲子園の初戦で負けようものなら周りの批判も凄いと思いますが。

中谷 今はまだコーチなので、そこまでではないです。きっと、そのあたりは高嶋先生が痛いほど感じられていると思います。あくまでも、僕は監督が目指す野球を支える立場の人間ですので。

──プロ野球と高校野球では、戦術面も違いますよね。

中谷 リーグ戦とトーナメント形式では明らかに大きな違いがあります。高校野球では連勝することが宿命とされます。一度でも負けたら次の対戦カードはなく「お疲れ様でした」となります。

 例えば、ある高校が県大会と甲子園で10連勝しないと全国制覇できないとします。これがプロ野球なら、10連戦があったら6勝4敗、貯金2で普通にOKです。もし7勝3敗、貯金4だったら高く評価され、8勝2敗だったとしたら、えっ、この調子は考えられないよ!すごいよ!というような世界なのです。

 そもそも野球って、リーグ戦が向いているスポーツだと思います。各チームで勝率を争いながら、個人の数字も競い合って評価されるものではないかと。でも一方で、高校野球は一度も負けられないからこそ、多くの感動が生まれ、共感を呼ぶのでしょうね。

──近年、元プロ野球選手が高校の指導者になるケースが多くなりました。これについては、どう思いますか。

中谷 プラス要素はたくさんあると思いますよ。実際に、元プロが携わっている学校は結果を出していますからね。日本のトップで教わったトレーニング方法や、一流選手の中で培ったものを教えることができるのですから。

 最近では京都の公立である乙訓高校。野球部長の染田(賢作)君は同志社大からドラフト自由獲得枠で横浜(現DeNA)に入団した投手でした。彼は引退してから教員となり、指導者としてわずか3年目で甲子園出場を決めました。

 ただ、採用する学校側もプロなら誰でも大歓迎というわけではないはずです。その個人の人間性の評価と教育方針などが合致しないと実現には至らないでしょう。

4 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る