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秀岳館から公立の母校へ。古豪復活を期す
名将・鍛冶舎巧の強化プラン

  • 加来慶祐●文 text by Kaku Keisuke
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 昨年末のクリスマスだった。その年の夏を最後に秀岳館(熊本)のユニフォームを脱いだ鍛治舍巧(かじしゃ・たくみ)が、母校である県岐阜商の監督に就任するという高校球界のビッグニュースが舞い込んできた。

 秀岳館では4季連続で甲子園へと導き、3季連続ベスト4入り。甲子園通算10勝4敗、勝率.714という好成績を残し、チームを一躍、強豪校へと育て上げた。

秀岳館では3季連続甲子園ベスト4を果たすなど、チームを強豪校へと導いた鍛冶舎巧秀岳館では3季連続甲子園ベスト4を果たすなど、チームを強豪校へと導いた鍛冶舎巧

 また在任期間は、藤吉優(元中日育成)、九鬼隆平(ソフトバンク)、松尾大河(DeNA)、田浦文丸(ソフトバンク)をプロ球界に送り出すなど、勝つための組織作りだけでなく、選手育成にも力を注いだ。おそらく今後も、秀岳館で鍛治舎の指導を受けた選手が大学・社会人を経てプロ入りを果たすだろう。

 2014年の春に秀岳館の監督に就任して、2017年夏に勇退。この短期間でこれだけの実績を残したとあって、退任発表後は様々な憶測が飛び交った。

「鹿児島県内の私立校の監督に就任するようだ

「いや、宮崎の学校に行くらしいぞ」

「自宅のある大阪の校に決まった」

「愛知県内の学校という説が有力だ

「大学で指揮を執るんじゃないか......」

 さらには、パナソニック専務役員時代の国際的人脈を生かして、「海外で活動するという話を聞いた」という噂まで囁(ささや)かれたほどだった。

 しかし鍛治舎が下した決断は、そのいずれでもなかった。

「もちろん、あちこちからお話はいただきました。しかし、次を受ける場合、よほどの大義名分がないとお引き受けできないと思っています。となれば、母校の県岐阜商か、早大系列しか考えられませんでした」

 秀岳館の監督を辞した昨年8月以降、県岐阜商OBや岐阜県の教育委員会から派遣された人が熊本県八代市にいる鍛治舎のもとを訪ねてくることが何度かあった。「母校をなんとかしてくれ」と。

 県岐阜商は、公立校では最多となる甲子園87勝を挙げ、選手権で1回、センバツで3回の全国制覇を達成している全国屈指の"古豪"だ。甲子園にはベスト8に進んだ2015年の春を最後に出場していないが、2016年の春には県大会で優勝を飾るなど、今もそれなりの成績を残している。だが、それだけで満足してもらえないの全国での上位進出を宿命づけられた伝統校ゆえだろう

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