早実・清宮に「脅弾」を浴びた八王子・米原大地が笑顔でいられたわけ (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 そして今夏、米原は新たなトラブルを抱えることになる。6月中旬に違和感を覚えていた腰に、強い痛みを感じるようになったのだ。

 7月16日の大会初戦・中大付戦で先発マウンドに上がった米原は、まるで本来の姿を見せられなかった。スピードは出ず、キレもない。2回までに3安打と打ち込まれ、マウンドから姿を消した。

「今日は腰の痛みというより、自分の準備ができていなかったのだと思います」

 試合後にそう語った米原だが、以降の登板は準々決勝の明大中野八王子戦で2イニングを投げただけ。八王子は昨夏のエース格だった技巧派左腕・早乙女大輝も左ヒジ痛で思うように登板できない状態で、事実上の飛車角落ちだった。

 それでもチームは下から伸び上がってくる球筋の変則右腕・村田将輝やタテに鋭く落ちるスライダーを武器にする古市哲也らの奮闘もあり、準決勝に進出した。そして、因縁の早実戦に先発したのは、エースナンバーをつけた米原だった。

 先発起用を決断した安藤徳明監督は言う。

「明大中野八王子戦は医師から『2イニングは大丈夫』と言われて出したのですが、痛みが出ず、今朝もいい顔をしていたので先発で使いました。半分くらいまで投げてくれれば......と思っていたのですが」

 米原は初回にいきなり4四死球を許すなど、立ち上がりは不安定な内容だった。しかし、徐々にエンジンがかかってくると、ボールの勢いが増してきた。そして4回、それまで走者がいなくてもセットポジションから投げていた米原は、ゆったりと振りかぶって投げ始めた。米原はその心境を振り返る。

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