長島三奈の名場面「甲子園がひとつになった決勝再試合」 (2ページ目)

  • スポルティーバ編集部●取材・文 text by Sportiva
  • 北川鉄雄●撮影 photo by Tetsuo Kitagawa

「試合後、私は取材でコマトマ(駒大苫小牧)の宿舎に行ったんです。『こんなこと聞くのもなんだけど、最後の三振のとき、どう思った?』と聞いたら、『ああ申し訳ないな、と思いました』と答えるんです。『なんで、田中くんが投げてここまで来たんじゃない。V2も達成したし、3年連続で決勝に来るなんて、すごいことだよ』って。ああ、野球の神さまはなんで、彼にこんな気持ちを味わせるんだろう。せめて、『やり切りました』って言ってくれたら......。とても、切ない気持ちになったのを覚えています」

 最近の大会で心をキュンとさせたのは、花巻東の千葉翔太。昨年、カット打法で話題になったのを記憶している人も多いだろう。

「まだ、彼が1年の時、学校で部長さんに『うちのエマニエル(坊や)〈※〉を紹介します』と言われたんです。それが身長150センチ台の千葉くんでした。翌年の春、取材に行った時、『エマニエル、元気にしてますか?』と聞いたら、『あいつ、外野のレギュラー獲りましたよ』って。『レギュラー、それも外野!?』。カット打法で、常に全力疾走、ヘッドスライディング。そして、花巻の子はみんなそうですが、目がキラキラしていて、真っ直ぐに向かい合って話してくれるんです。甲子園でぜひ会いたいなあ、と思っていたら、地方大会で優勝してくれて。この子は絶対、みんなに伝えなくちゃいけないと『熱闘甲子園』でも"千葉くんスペシャル"として、余すことなく、取材させてもらいました。本大会でも、あの大きな済美の安楽(智大)くんに向かっていったり、内野5人で守られてもその間を抜いたり、大活躍。佐々木監督も『うちの大黒柱です』と言ってくれました。体が小さいから、野球をあきらめるという子もいるわけじゃないですか。そういう子たちにも勇気を与えたし、何でもできるんだよ、と伝えてくれたと思います。私も15年分の思い、すべて出し切りました。悔いなしです」
※アメリカの俳優・歌手。身長約130cm。80年代、日本のCMにも出演し、人気者に

 では、プレイやスケールで記憶に残っている選手は? という問いに、三奈さんが少し考えて、挙げてくれたのは大投手3人。

「やっぱりマツ(松坂大輔・横浜、現メッツ)、ダルビ(ダルビッシュ有・東北、現レンジャース)、大谷くん(大谷翔平・花巻東、現日本ハム)の3人ですかね。でも、その中でもマツは別格かなあ。天才肌のダルビにも驚いたし、大谷くんも地方大会で160kmの球も生で見ているんですけど......オーラや完成度も含めるとね」

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