長島三奈が感動した「ふつうの子たち、佐賀北の快進撃」 (3ページ目)

  • スポルティーバ編集部●取材・文 text by Sportiva
  • 北川鉄雄●撮影 photo by Tetsuo Kitagawa

 次に「試合やプレイのことではないんですけど、いいですか……」と前置きして、挙げてくれた高校が、コマトマ(駒大苫小牧)だ。

「こういうチームこそ、全国に知ってもらうべきだ、初めてそんな感情を抱かせてくれたのがコマトマでした。まず、ここは応援のブラスバンドの演奏自体が、とても優秀なんです。演奏は攻撃の時にしますけど、時折ブラスバンドのボリュームが下がる。それが、相手の伝令が出ている時だったんです。最初は気のせいかな、と思いましたが、毎回そうだった。伝令が出て来るということは相手がピンチで、自分たちはチャンスなわけで、ガンガン盛り上がりたいところでしょう? でも、伝令の声が聞き取れるようにと、配慮していたんです」

 選手の行動にも、びっくりして、感動したシーンがいくつもあった。

「打者が四球を選んで、進塁するとき、バットを放るじゃないですか。でも、コマトマは違うんです。バットを投げず、(グリップが)地面に着くまで、手を添えて、置くんです。もう、私感動しちゃって、キャプテンの林(裕也)くんに伝えました。『すっごく、カッコいいよ』って。そして、一塁に行く時も、球審の後ろを通っていくんです。審判の前を横切らない。あと、これは番組でも取り上げたんですけど、コマトマの投手が、デッドボールを当てちゃったんですよ。ふつう打者のチームが、救急箱を持ってくるじゃないですか。でも、そのとき、コマトマの控えがスーパーダッシュで打者に駆けつけ、コールドスプレーをかけて、手当てして、ベンチに戻ったんです。この出来事に、球場から拍手が起こりました」

 高校野球の魅力はそういうところにもあると、三奈さんは力説する。そんな場面に出会えることを期待して、今年も甲子園球場に行く。

「剛速球や豪快なホームランも魅力ですけど、審判や相手チームに敬意を払った“ザ・高校野球”という行動やふるまいも見てもらいたいですね。なかなか中継だと、バットを置くところやコールドスプレーのシーンにカメラは切り替わらないじゃないですか。なので、球場にも足を運んでもらいたいですね。特にコマトマが出た時は(笑)。今年は初出場が9校もあるので、また新しい発見があるのでは、と楽しみにしているんです」

これは第90回大会に出場した木更津総合のボールボーイたちがくれた、 甲子園の土。番組では裏方にもスポットを当て、取材してきた。「選手からこういうものをもらうことが初めてで。これも宝物ですね」これは第90回大会に出場した木更津総合のボールボーイたちがくれた、 甲子園の土。番組では裏方にもスポットを当て、取材してきた。「選手からこういうものをもらうことが初めてで。これも宝物ですね」
(つづく)


長島三奈
1991年、テレビ朝日入社。スポーツ局の記者として、サッカーJリーグや水泳、ゴルフを取材。1998年から、夏の全国高等学校野球選手権大会のダイジェスト番組『熱闘甲子園』でメインキャスターを務め、高校野球取材に携わる。昨年の大会を最後に、キャスターを退いたが、現在もフリーの記者として、全国各地で高校野球を取材している

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