【高校野球】夏の甲子園こぼれ話。本塁打量産のワケと上位進出のカギを握った右打者 (2ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 果たして、今年は本当に空気が乾燥していたのか。ここ10年間の大会期間中の平均湿度と本塁打数を調べてみたところ、面白い結果が出た。

03年(平均湿度=77.1% 本塁打数=13本)
04年(平均湿度=70.3% 本塁打数=33本)
05年(平均湿度=70.9% 本塁打数=32本)
06年(平均湿度=65.6% 本塁打数=60本)
07年(平均湿度=69.1% 本塁打数=24本)
08年(平均湿度=70.7% 本塁打数=49本)
09年(平均湿度=71.2% 本塁打数=35本)
10年(平均湿度=73.8% 本塁打数=26本)
11年(平均湿度=73.4% 本塁打数=27本)
12年(平均湿度=68.1% 本塁打数=56本)

 今年は史上最多の60本塁打が飛び出した06年に次いで湿度が低かった。さらに13本塁打だった03年は湿度が高く、これらの数字を見る限り、今年は空気が乾燥していたためボールが飛びやすいというのは本当だったようだ。余談だが、平均湿度69.1%ながら24本塁打だった07年は、低反発球が導入された年である。

 もちろん、本塁打の増えた理由はそれだけではない。今大会のランニング本塁打を除く54本塁打の内容を調べてみると様々なことに気づく。

 まずは右打者と左打者の内訳。右打者の37本に対して、左打者は17本と倍以上の違いがある。これは、甲子園はライトからレフトへ特有の浜風が吹くため、レフト方向の打球は風に乗って飛距離が出やすいためだ。今大会では4本塁打の北條史也(光星学院)以外にも、田村龍弘(光星学院)、藤井勝利(倉敷商)、田端良基(大阪桐蔭)、笹川晃平(浦和学院)、井澤凌一朗(龍谷大平安)の5人の右打者が2本塁打を放った。ちなみに2本塁打した左打者は、大森友哉(大阪桐蔭)と篠原優太(作新学院)のふたりだけ。

 また、本塁打の打球方向を見ても、レフト32、センター11、ライト11とレフト方向が圧倒的に多く、甲子園では右打者が有利なのは明らかだ。上位進出校を見ても、大阪桐蔭は4人の右打者がスタメンに並び、光星学院、明徳義塾は4人、東海大甲府は7人だった。逆にスタメンに左打者が8人もいた愛工大名電、旭川工は初戦敗退。7人だった飯塚、智弁和歌山、済々黌、松阪、6人の今治西、杵築、北大津、宇部鴻城、遊学館、神村学園、新潟明訓など、左打者が多くを占めたチームでベスト8に進出したチームはなかった。

 その年の気候も結果に大きな影響を与える夏の甲子園。今年に限っていえば、右打者を多く揃えたチームに勝利の女神が微笑んだと言える。

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