2014.10.27

【自転車】片山右京「逝ったふたりに見せてやりたい」

  • 西村章●構成・文 text by Nishimura Akira 五十嵐和博●写真 photo by Igarashi Kazuhiro

遥かなるツール・ド・フランス ~片山右京とTeamUKYOの挑戦~
【連載・第28回】

 TeamUKYOの今後について問うと、片山右京は、目標とする「ツール・ド・フランス参戦」の展望だけでなく、2020年・東京オリンピックが自転車界に及ぼす影響や、全国各地での支援活動についてもビジョンを語った。いったい何がこれほどまでに彼を、精力的な活動に駆り立てているのか――。片山を動かしている原動力について、さらに話を聞いてみた。

(前回のコラムはこちら)

51歳となった今、自分の役目について語る片山右京 何のために自分たちは、多方面に渡る活動を続けているのか。そして、それはいったい誰のための活動なのか――。

 そこを見失うと、自分たちの存在理由もなくなってしまう、と片山右京はいう。

 現在の片山自身の核を占めているこの『思想』は、モータースポーツの現役選手時代には考えたこともないものだったという。

「僕の仕事は人を蹴落とすことで、むしろ完全な利己主義者だから、そういう感覚はゼロだったんですよ。でも、F1に乗っけてもらったことで、自分に会いたいと言ってくれる人たちがいて、その活動の中でたとえば、『メイク・ア・ウィッシュ(難病を抱える子どもたちの夢の実現を援助する世界的ボランティア団体)の子たちに会ったりしたことで、少しずつ自分の中で仕事に対する意識や、命に対する価値観が変わっていった。

 また、自分自身も親になったことで、決して臆病になったわけではないけれど、危険な行為をすることが果たして冒険なのか……という疑問も生じるようになった。命を大切にしながら挑戦をすることが、むしろ大事で大切なことなんじゃないか、と少しずつ思うようになっていったわけです」

 やがて、レースの現役を退き、活動の場を広げて様々な世界でチャレンジを続けていく中で、片山自身の生き方や、生命というものに対する向き合い方を大きく決定づける、ある出来事が発生する。

 2009年冬、片山と同僚男性2名が厳寒の富士山登山中に遭難。自身は自力でなんとか下山を果たしたものの、同僚2名は生還を果たせず、山で命を喪ってしまう事故が発生した。