2014.08.11

【自転車】片山右京「マッサーが語るレーサーの超人的肉体」

  • 西村章●構成・文・写真 text & photo by Nishimura Akira

遥かなるツール・ド・フランス ~片山右京とTeamUKYOの挑戦~
【連載・第17回】

 自転車ロードレースの世界には、走行後に選手たちの身体をマッサージする「マッサー」という裏方がいる。本場欧州では、マッサージ以外にも食事の準備をしたり、クルマを運転するなど、選手を包括的にサポートする「ソワニョール(Soigneur/フランス語で『セラピスト』の意味)」と呼ばれる業種が、チームに欠かせない存在として確立しているという。現在、TeamUKYOのマッサーとして活動している森川健一郎氏に、本場欧州で学んだマッサーの役割について聞いた。

(前回のコラムはこちら)

選手と積極的にコミュニケーションを図るマッサーの森川健一郎(右) プロフェッショナルのソワニョールを志し、その数ヶ月後には、あれよあれよという間にイタリアまで行ってしまった森川健一郎は、2004年、チームNIPPOの見習いマッサージ担当としてレースの本場欧州で様々な経験を重ねていった(森川氏がマッサーを目指した経緯は前回コラム参照)

「現地でチームNIPPOのレースを手伝っている中で、イタリアのカンピオナート『ナショナル選手権』にも行きました。その現場で、初めて中野喜文さん(日本の自転車競技会で『スポーツマッサージの第一人者』として知られる人物。現在はデンマークを本拠地とするUCIプロチーム『ティンコフ・サクソ』の専属マッサー)にもお会いしました。その後、ポーランドのステージレースや、クロアチア、スロベニアなどのレースにも連れて行ってもらい、それが終わると日本のUCIレースに合わせて帰国し、国内でミヤタ・スバル・レーシングチームの選手たちのケアをさせてもらう――そんな状態で足かけ2年ほどマッサーをやらせてもらいました」

 この欧州時代に森川は、先輩格のイタリア人マッサーから多くのことを学んだ。そのひとつが、「治療と回復は違う」ということだ

「『トリートメントじゃなくて、リカバリーなんだ。分かるか?』と言われたんです。痛いところはもちろん診てあげるけど、治療が始まるとキリがないから治療しちゃだめだよ、回復させるんだよ、というわけです。今日1日走って疲れた肉体を、走る前のフレッシュな状態に回復させるのが君たちの仕事だよ、と。だから、硬くなったところをグリグリやるのではなく、オイルマッサージのようにサーッと軽く流していく方法ですね」

 国内レースで活動するミヤタ・スバル・レーシングチームは、森川に対して強い拘束を要求しないこともあり、スケジュールが重ならない場合には、他のチームからの依頼にも応えることができたという。