【自転車】片山右京「レースに欠かせないマッサーという存在」

  • 西村章●構成・文・写真 text & photo by Nishimura Akira

遥かなるツール・ド・フランス ~片山右京とTeamUKYOの挑戦~
【連載・第16回】

 ツール・ド・フランスのような数週間に渡る長丁場のレースで、連日200キロ近くを走行する選手の疲労度は相当なものだ。蓄積した疲れをいかに取り除くかが、レースを勝つ上で重要なカギとなっているのは間違いないだろう。その大事な役割を担っているのが、「マッサー」という存在だ。3年後のツール参戦を目指しているTeamUKYOのマッサーに話を聞いた。

(前回のコラムはこちら)

レース中は選手にドリンクを渡す仕事もこなすマッサーの森川健一郎(左)レース中は選手にドリンクを渡す仕事もこなすマッサーの森川健一郎(左) あらゆるプロフェッショナルスポーツには、その競技独特の裏方的役割がある。自転車ロードレースの場合は、『マッサー(masseur/フランス語源で「マッサージャー」の意味)』と呼ばれる仕事がそれに相当するだろうか。

 選手の脚力が勝負のキモとなる競技である以上、長いシーズンを戦い抜くためには、レース後の疲労を残さないことがなにより重要だ。特に、何日間も競技が続くステージレースでは、「その日の疲労を次の日に残さないこと」が勝負を大きく左右する。グランツールを戦うプロツアーチームプロコンチネンタルチームは、複数のマッサーを用意し、選手たちのケアにあたっている。

 片山右京率いるTeamUKYOで、この仕事を担当しているのが、森川健一郎だ。

 森川がTeamUKYOに加わったのは、昨年9月。当初は、「主にUCIレースで選手たちのケアを担当する」ということで加わったが、年間シリーズ戦のJプロツアーにも帯同しており、TeamUKYOが参戦するほぼすべてのレースで、森川は選手たちのフィジカルコンディションをケアしている。また、マッサージだけではなく、長時間のレース中に選手が摂取する補給食の準備や、合宿所でのレース準備、さらにクルマの運転なども行なうため、実際のところはチームの裏方仕事を幅広く引き受けていることになる。

 現在45歳の森川がこの職業を目指したのは、すでに社会人として仕事をしていた26歳のころだった。

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著者プロフィール

  • 片山右京

    片山右京 (かたやま・うきょう)

    1963年5月29日生まれ、神奈川県相模原市出身。1983年にFJ1600シリーズでレースデビューを果たし、1985年には全日本F3にステップアップ。1991年に全日本F3000シリーズチャンピオンとなる。その実績が認められて1992年、ラルースチームから日本人3人目のF1レギュラードライバーとして参戦。1993年にはティレルに移籍し、1994年の開幕戦ブラジルGPで5位に入賞して初ポイントを獲得。F1では1997年まで活動し、その後、ル・マン24時間耐久レースなどに参戦。一方、登山は幼いころから勤しんでおり、F1引退後はライフワークとして活動。キリマンジャロなど世界の名だたる山を登頂している。自転車はロードレースの選手として参加し始め、現在は自身の運営する「TeamUKYO」でチーム監督を務めている。

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