【新車のツボ160】ジープ・ラングラー。元祖の末裔は古くて新しい (3ページ目)

  • 佐野弘宗●取材・文・写真
  • text & photo by Sano Hiromune

 各部の形式は古典的でも、最新のラングラーはさすが最新設計だけに、フツーに走っている分にはなんら困ることはない。ただ、その味わいは見事なまでにラングラーそのもの=はるか昔の元祖ジープを思わせる......。

 たとえば、運転席はよじ登るように高く、背筋を伸ばした着座姿勢にダッシュボードとフロントウインドウが目前に迫るドラポジは昔ながらのミリタリー感が丸出し。それに高速道ではスピードが上がるほど手応えがフワついてくるのも、元祖に忠実なスタイリングではどうしても空力的に不利があるからだ。

 このように、ラングラーの設計思想はたしかに古臭いが、いっぽうで全身がクルマの本質的なツボにあふれている。

 ちょっと窮屈なドラポジも、実際には見晴らしはサイコーで、しかもボディの四隅が手に取るようにイメージできる"肌感覚"ともいうべき車両感覚はバツグンだ。舗装路の細かい凹凸を走ると足元がゴトつきがちになるのは、左右輪が剛結されたリジッドサスペンションの宿命でもある。そんな乗用車としては不利なリジッド形式も、伸び側のサスペンションストロークが非常に長いので、過酷な凹凸ではタイヤが路面から離れにくい。だから、悪路性能が高い。このように、ラングラー特有のクセも、すべてが"ミリタリー由来のホンモノの極限性能"のため......と考えれば、好事家にとってはこのうえないツボである。

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