【新車のツボ146】スズキ・クロスビー 、貴重な世界最小級SUV (2ページ目)

  • 佐野弘宗●取材・文・写真 text&photo by Sano Hiromune

 この種の拡幅軽は「最大4名しか乗れない」とか「高速や長距離ではエンジンに余裕がなくて意外に燃費が悪い」といった軽の弱点を、低コストかつ手軽に克服できる効率的な商品企画ではあった。ただ、軽サイズに最適化された基本設計を強引に拡幅して小型車に仕立てる......という手法では、走行性能や品質面で少しばかりムリヤリ感があったのも事実。

 というわけで、その後に「世界で売れる、マニアも納得の良質小型車を真正面からつくる」と決意した現在のスズキには「軽の拡幅版はつくるべからず」という社内的な不文律ができたという。

 それゆえに、クロスビーもランプ類のデザインや窓支柱の角度こそ確信犯的にハスラーに似せられているものの、モノとしてのハスラーとの共通部分は皆無に近い。前記のホイールベースも厳密にはハスラーのそれより10mm長く、プラットフォームと呼ばれる土台部分も、軽よりひとつ上級の別物なのだ。

 写真でこそハスラーとそっくりに見えるクロスビーだが、すでにご存じの人も多いように、実物のクロスビーは見た目もハスラーとは別物感が強い。前後に丸いボディを基本にタイヤ付近をふくよかに肉づけしたプロポーション、そして浮いたように見せるルーフ......といったクロスビーのデザインのツボは、専門的な造形技術としても見ても"四角四面"のハスラーとは発想の根本から異なるそうだ。

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