2015.07.12

【新車のツボ106】
スズキSX4エスクロス試乗レポート

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 スズキのエスクロスは、スイフト(第2回参照)やキザシ(第59回参照)とならぶ"軽(自動車)ではないスズキ"の最新作にして、残念ながらすでに販売終了したスプラッシュ(第58回参照)と同じく、厳密にはハンガリーで生産される輸入車である。

 エスクロスは最近話題のホンダ・ヴェゼルやマツダCX-3と同様の、いわゆる"コンパクト・クロスオーバー"の1台である。このジャンルが最初にブレークしたのは欧州で、5年ほど前から各社が次々と参入して、今ではこの種の商品を持っていない欧州メーカーは存在しないほどである。実際、前記の国産コンパクト・クロスオーバーも、世界的ブームの兆しをにらんで開発されたといっていいが、ビジネス的に欧州市場を重視した企画である。

 さて、エスクロスの正式車名にはアタマに小さく"SX4"と表記されているが、SX4を名乗るスズキのクロスオーバーは今回で2代目となる。初代SX4が出たのは約10年前。当時はまだ「クロスオーバーってなんスか?」ってな黎明期であり、じつはスズキはコンパクト・クロスオーバーの元祖のひとつなのだ。さらに、初代SX4は欧州ではイタリアのフィアット名義でも販売された。SX4は日本では知らない人も多い超カルト商品(失礼!)だったが、欧州ではメジャーなフィアットの提案型商品として、このジャンルの火つけ役の一角を担った......ともいえる。

 古くはアルトにワゴンR、最近ではハスラー(第72回参照)といった軽がその典型だが、スズキはこういう新ジャンルの目のつけどころが非常に鋭い。しかも、スズキは徹底して"したたか"でもある。スズキは日本の軽ではトップメーカーとして自前で勝負するが、自分たちの知名度が高いとはいえない欧州では、こうして巨大ブランド(=フィアット)を味方につけて、結果的にちゃんと成功させる。

 高い企画力はあるが、それを盲信して突っ走りすぎない。そういう先見性と地道さのバランスが、スズキという企業最大のツボといっていい。

 ビジネス経営ネタとしても格好のサンプルになりそうなエスクロスは、ハンガリーから輸入するというスズキの戦法を見ても、日本での大量販売は見込んでいない。今年春に発売されたばかりのピッカピカの新型車だが、またまた失礼ながら、日本ではすでにカルト確定......と断言したい。それでも取り上げた最大の理由はもちろん、これがクルマオタク的に見て、とうていスルーできない存在だからだ。