【新車のツボ72】スズキ・ハスラー試乗レポート

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 ハスラーは昨年末の受注開始以来、とくにクルマに興味のない人からクルマにうるさいオタク方面まで、まさに老若男女を問わずに話題沸騰である。

 そして、実際にバカ売れ中だ。消費増税前の駆けこみ需要の側面があるにしても、発売約1ヵ月の1月末時点で、受注台数は2.5万台。月販目標の約5倍。ハスラーは同じスズキの軽自動車(以下、軽)でもワゴンRやスペーシアといった主力モデルではなく、いってみれば"遊びグルマ"である。まあ、ニッチ商品のわりに価格は高くない(←ここがスズキのうまさ!)けど、安くもない。そう考えると、この人気はちょっとしたニュースだ。

 このハスラーのクルマとなり......は見たまんま(笑)である。ベースとなったのはワゴンR。そのワゴンRの最低地上高を25~30mmカサ上げして、内外装を武骨でレトロ風味、かつオモチャっぽいデザインにして、アウトドア用途を想定した防水トランク(一部グレード)を備えたSUV風のクロスオーバーである。

 同じスズキの軽SUVでも、マジ冒険グルマのジムニー(第11回参照)とは別物の、いわゆる"なんちゃってオフローダー"の一種。意地悪にいえば、着想自体もとくに目新しいわけでない。各部のデザインモチーフや2トーンカラー、防水トランクなどのハスラーの売りも「どっかで見たような......」の既視感が満載だ。

 ハスラーは乗っても走っても、どうってことない。地上高をカサ上げすると、高重心を支えるためにサスペンションを引き締めざるをえず、乗り心地もワゴンRよりちょっとだけコツコツだ。ただし、そのサジ加減というか落としどころは悪くない。落胆する必要はまるでないが、感動するほどでもない。インテリアの基本骨格もワゴンRのままなので、普段使いからレジャーまで困ることはまずないが、サプライズもとくにない。

 ......なんて、わざと斜にかまえてみたワタシだが、実際のハスラーは理屈ぬきでツボである。かくいうワタシも、ハスラーを目の前にした瞬間から、この原稿を書いている今の今も「俺が買うなら、あえて2トーンではないシブ色で。さらに2WDを選んで"たまたま乗ってます感"を出そうかな......。でもなあ、せっかく買うんだから、やっぱ4WDもいいなあ。んで、今日みたいに東京で大雪が降ったら、涼しい顔でパトロールに出かけて......」などと、勝手な妄想と皮算用がエンドレスで困っているくらいだ。

1 / 2

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る