【新車のツボ102】
プジョー308試乗レポート (2ページ目)
もっとも、見た目にカッコいい液晶タッチパネルも、エアコンの温度調整ひとつもピッピッと数タッチを要したり、メーターを上から見るほど極小の楕円ステアリングは、慣れないと操作に違和感あったり......と、スパイスが利きすぎ感もなくはない。まあ、昔のシトロエンや超高速旅客機のコンコルドなどが好例だが、フランスはときおり、こういうハイテクを先走らせてしまうクセがある。逆にいうと、308のツッコミどころはそれくらい。これくらいの愛嬌が残っていたほうがツボ......ということもできる。
しかし、そんな新型308をここで取り上げたくなった最大のツボは、やっぱり走りがステキだからだ。308は先代(第19回参照)の走りも絶妙なフワピタ味だったが、新型はそのフワピタを、車体の水平を保ったままやってのけるのが新しい。
新型308のエンジンはゴルフが先べんをつけたダウンサイジングターボの一種で、絶対的な性能が従来の1.6Lクラスなのは、ゴルフの売れ筋モデルと同等。ダウンサイジングターボ時代に入ってからのエンジンは、細かい排気量や気筒数が各社バラバラなのが、われわれ選ぶ側にとっては楽しい。
プジョーの場合は1.2Lの3気筒だが、このほどほどの存在感(=震動)や低速のパンチ感がなんとも絶妙。ダウンサイジングエンジンのおかげでクルマの鼻先がこれまでより明らかに軽くなったので、ステアリングを大きく切った奥の、さらにその奥までグイグイ強力に利いて、なおかつ軽快に曲がるところも、新型308の新しくて気持ちいいツボ。このクラスで、これほど軽快なヒラヒラ感があるクルマはほかにない。前出の極小ステアリングも、じつはこのヒラヒラ感を強調する重要アイテムになっていて、そういう深い部分での作り込みがまたツボなのだ。
まあ、何年後かの下取り価格や細かい装備類まで含めたコストパフォーマンスを考えれば、まだまだ王者ゴルフの商品力が抜けているのは事実。ただ、そんなゴルフと同じ土俵で比較したうえで、しかも「どうせなら、ちょっと変わって面白いヤツが欲しい」なんてヒネリを求めるなら、現時点では新型308が最強のゴルフキラーである。
【スペック】
プジョー308シエロ
全長×全幅×全高:4260×1805×1470mm
ホイールベース:2620mm
車両重量:1320kg
エンジン:直列3気筒DOHCターボ・1199cc
最高出力:130ps/5500rpm
最大トルク:230Nm/1750rpm
変速機:6AT
JC08モード燃費:16.1km/L
乗車定員:5名
車両本体価格:345.8万円
著者プロフィール
佐野弘宗 (さの・ひろむね)
1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/
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