【新車のツボ102】プジョー308試乗レポート

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 全長4.2~4.3mくらいのハッチバックは専門用語で"Cセグメント"と呼ばれている。ボディサイズが大きすぎず、それでも大人4人が不足なく乗れる広さはあり、後席を倒せるのでイザというときは大荷物もOK......というCセグメントは、一家に一台のファミリーカーとしての最大公約数みたいな存在だ。

 Cセグメントは世界的にまんべんなく売れる基幹商品なので、各社ともなにかしらのカタチで用意しており、とくに欧州車ではド定番のジャンルだ。しかし、日本の輸入車市場を見てみると、このクラスはフォルクスワーゲン・ゴルフ(第64回参照)が絶対王者。Cセグメントは各社ともけっこうな力作を用意しているのだが、知名度でも商品力でもゴルフがあまりに圧倒的。とくに日本ではゴルフ以外のCセグメントが大成した例がほとんどない......というのが現実である。

 プジョー308もまさに"フランス版ゴルフ"というべき1台である。308は先代もここで取り上げた(第19回参照)が、今回の308は基本骨格となるプラットフォームもエンジンも完全刷新されて、骨の髄から新しいブランニューモデルだ。

 プジョーを含むフランス車は歴史的にデザインや走りにキラリと光るところがありながらも、どっかにスキやツッコミどころがあったりして、マニアにはそういう"愛嬌"がまたツボだったりした。しかし、新型308は有史以来(!)最もスキがないフランス車と断言したい。細部の作り込みや塗装や樹脂類の品質感、ドアや走りでの剛性感、そして安全やエコ関係のハイテク......といったドイツモノの大得意分野において、最新のゴルフとならべて比較しても、新型308は「だからフランス車は......」とグチりたくなる明らかなツッコミどころもまったくないのだ。

 こうしてクラス最良レベルに達しつつも、そこからさらに一歩踏み出しているところが308のツボである。たとえば、室内機能を液晶タッチパネルに集約してスイッチ類を激減させたインテリアデザインや、最初は「遊園地のゴーカート用を間違ってつけちゃったか!?」と錯覚しそうになるほど小径で楕円形のステアリングホイールなど、独自のスパイスがピリッと利いている。

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