【新車のツボ85】
フォード・フィエスタ試乗レポート

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 いきなり別のクルマの話で恐縮なのだが、先日発売されたダイハツの新型コペンは世界唯一の軽自動車スポーツカーであり、その開発リーダーをつとめたF氏は、長年シャシー開発や走りの味つけを担当してきた人物。そんなダイハツきっての"走りのプロ"が、新型コペンの開発で参考・目標にしたクルマとして、真っ先にあげたのがポルシェと、ほかでもないフォード・フィエスタだった。

 ポルシェは世界最高峰のスポーツカーだから、軽自動車とはいえスポーツカーのコペンが参考にするのは、当然といえば当然だ。そのいっぽうで、コペンはほかのダイハツ軽自動車と、クルマの基本部分を共用するFF車である。というわけで、コペンがより具体的な"目標"としたのが、同じFF車であるフィエスタ......ということだ。

 最近でもフォーカス(第52回参照)やクーガ(第68回参照)などを好んで取り上げている私は、いうまでもなくフォードファンである。だから、「フィエスタを目標にした」という一点だけで、新型コペンは楽しいスポーツカーにちがいないと、(乗る前から)確信した。

 現在のフィエスタは世界中で販売されるワールドカーだが、そもそもは欧州で開発されて、欧州だけで販売されてきた典型的な"欧州フォード"のひとつだ。この最新のフィエスタも世界中で生産されてはいるが、開発を主導したのは欧州拠点。しかも、この日本仕様もドイツ製で、いまだに"正真正銘の欧州車"の味わいが、ムンムンに色濃いのだ。

 フィエスタを含む欧州系フォードは、とくに(ただでさえ走り自慢が多い)欧州において"走りがいいクルマ"という確固たる定評を得ている。欧州のクルマメディアでコンパクトカーの比較テストというと、必ずといっていいほどフィエスタが引っ張り出されて、少なくとも走りでは"ベスト"とか"トップクラス"と評されるのが恒例である。

 フィエスタのクルマづくりは良くも悪くも基本に忠実で、奇をてらったり、分不相応に高性能な部分はない。だから、フィエスタの走りのツボを、写真や数字などの具体例で表現しにくいのが、本当に口惜しくてしかたない。いつものように「とにかく乗ってみて」としかいいようがないクルマだ。

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