【新車のツボ42】スズキ・ワゴンRスティングレーT 試乗レポート

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 ワゴンRといえば軽自動車不動の横綱にして"日本でいちばん売れるクルマ"の常連でもある。そんなワゴンRがこの9月初旬にフルチェンジ。モデル末期をホンダN BOXに突かれた今年前半は軽販売トップをさらわれたものの、発売初月から早くも首位奪還した。

 新型ワゴンRといえば、日本人ハリウッド俳優の指先から電気バチバチ......のTVCFのように、徹底した低燃費技術が売りである。

 クルマはエンジン点火系をはじめ、エアコン、オーディオ、ライト......などなどのためにエンジンで発電しながら走る。一説にはエンジンパワーの約10%がそういう発電に食われていたともいう。昨今はそこにメスを入れるのが技術的な流行で、これまでムダにしていた減速エネルギーも充電に使って(下り坂の自転車ダイナモライトに似た原理)、エンジンの負担を減らす。じつはハイブリッド車も、そういうエネルギーを最大限に回収・貯蔵・活用できるのが大きなメリットである。

 新型ワゴンRはハイブリッド車ではないが、むかしながらの鉛バッテリー(=そういう頻繁な充放電が不得意で、容量にも限界あり)に加えて、助手席シート下の最新リチウムイオンバッテリーで電気をできるだけ捨てない工夫をした。それが電気バチバチの意味。新型ワゴンRはさらに、減速では車速13km/hから......という現時点でおそらく世界一早漏なアイドルストップと、冷気を蓄積するエアコンで「真夏の炎天下でも連続アイドルストップ1分以上」を実現した。とにかくエンジン止めまくりで電気回収しまくるわけだ。

 そんなこんなでシリーズ最良燃費の"JC08モード28.8km/L"を達成したのが自然吸気エンジンのFFモデルなのだが、ワタシのツボをもっとも刺激したワゴンRは、悪顔系のスティングレー。もっといえばパワフルなターボエンジンを積む"スティングレーT"だ。

 ワゴンRスティングレーTは自然吸気モデルより明らかにパワフルなだけではない。だれもが即座にわかるほど静かでもあり、またカチカチの低燃費タイヤで乗り心地がいまひとつの他のワゴンRに対して乗り心地も圧勝だ。シュワッと曲がってピタッと安定して、路面の凹凸を寛容に包み込む身のこなしは「高速移動体としては背が高すぎ?」のN BOXやダイハツ・タントとは、やはり次元がちがうといわざるを得ない。

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