2020.11.07

稀代のマルチランナー田中希実選手。
挑戦の先にある「誰も見たことがない世界」


宮司愛海連載:『Manami Memo』第18回

フジテレビの人気スポーツ・ニュース番組『S-PARK』とweb Sportivaのコラボ企画として始まった宮司愛海アナの連載『Manami Memo』。第18回は、宮司アナが取材した陸上の田中希実選手について。

フジテレビ『S-PARK』でキャスターを務める宮司愛海アナ photo by Sano Takashi

 田中希実選手に取材をさせていただいたのは10月上旬。練習拠点にしている兵庫県のとある陸上競技場に伺いました。

 今年7月、8月とそれぞれ違う種目(3000mと1500m)で日本記録を更新し、陸上界を驚かせた田中選手。前代未聞の「種目を絞らず競技に取り組む」姿勢の裏側にいったいどんな思いがあるのか迫りました。

 台風14号が接近していた10月上旬。冷たい風が吹き続け、日が暮れるにつれ体感温度もどんどん下がっていく中、大会に向けて黙々と自らのやるべきことをこなしていく田中選手。

 週末に大会が控えているということで、この日は2000mと400mをそれぞれ1本と比較的軽めのメニューを消化し、2時間の練習を終えました。

 驚いたのは、この日400mで自己ベストを出したこと。練習前に本人も「寒い」と漏らすほどコンディションの良くない中で、手を抜かず常に結果を追い求める姿勢が光っていました。

 田中選手は、陸上界では珍しいマルチランナー。

 取り組む種目は800m、1500m、3000m、5000m、10000m、さらにはクロスカントリーと、実に6種目にも及びます。

 1つの種目に絞って集中的に実力を磨いていくほうが良いという考え方や声があるなか、これだけ多くの種目に挑戦するのは異例なこと。しかし、ただやみくもにやっているということではなく、もちろん、きちんと意図があってのことなのです。

 例えば、10月初旬に行なわれた陸上の日本選手権。1500mに出場した田中選手は、ラスト900mというかなり早い段階でスパートに入り、ぐんぐん周りを引き離し見事優勝を果たしました。

 なぜこの早いスパートが可能になったのか。それは「5000mを意識した練習をずっとしてきたから」。1500mよりも長い距離に取り組むことで、900mというロングスパートでも我慢できるスタミナがついたということなのです。

 このように、田中選手が挑戦する6種目にはそれぞれ相互作用があり、だからこそ1種目にとらわれないスタイルが、田中選手の速さ、強さの秘訣だといえるのでしょう。