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瀬戸大也、伊藤美誠らの体づくりをサポート。
味の素とスポーツの関わり

  • text by Sportiva
  • 高橋学●写真 photo by Takahashi Manabu

支えて活きる。最先端「企業スポーツビジネス」

瀬戸大也とコミュニケーションをとり、食事・栄養面をサポート瀬戸大也とコミュニケーションをとり、食事・栄養面をサポート『味の素スタジアム』、『味の素ナショナルトレーニングセンター(以下NTC)』。この名称は、スポーツ好きな人なら何度も耳にしたことがあるはず。どちらも『味の素』がネーミングライツを取得している施設だ。

 その味の素は、この夏に迫った、東京2020オリンピック・パラリンピックのオフィシャルパートナーも務め、すでに出場を決めている競泳の瀬戸大也、卓球の伊藤美誠らのサポートも行なっている。味の素はどうしてスポーツへの関わりを深めてきたのか。そしてどのような活動をしているのか。オリンピック・パラリンピック推進室の江崎貴彦氏に話を聞いた。

「センターポールに日の丸を掲げることがJOC(日本オリンピック委員会)の目的の一つなんですが、味の素はそれを応援するために2003年からJOCとオフィシャルパートナーシップ契約を締結し、"アミノ酸"の技術とノウハウを通じた食と栄養でアスリートのコンディショニングサポートをする『ビクトリープロジェクト®』をJOCと共に立ち上げました。この活動によりコーポレートブランド価値を高めると同時に、社員のモチベーション向上も狙いの一つでした」

 そもそもこの"アミノ酸"とは何なのか。かみ砕いていうと、食事で摂る肉や魚などのたんぱく質が、体内で分解されるとアミノ酸になる。このアミノ酸が、人間が生きるために必要なたんぱく質に再合成される。このたんぱく質が肌や髪、筋肉・内臓をつくっている。つまり私たちの生命そのものを生み出す重要な物質、それがアミノ酸なのだ。

 アミノ酸はこの「機能」だけでなく、だしやスープの「うま味」の素であり、食べ物の味を決める要素のひとつになっている。味の素はこのアミノ酸の「機能」と「おいしさ」でアスリートを支えようと取り組んでいるのだ。

 現在サポートしているのは、代表チーム、個人選手と幅広い。代表チームでは、競泳、バドミントン、空手、アーティスティックスイミングなどで、アスリートでは、前述の瀬戸、伊藤をはじめ、フィギュアスケートの羽生結弦、バスケットボールの富樫勇樹ら錚々たる選手たちをサポートしている。

「競泳をはじめとする競技団体、アスリートとNTCで栄養についての勉強会をしています。そしてNTCの食堂で実際に食事を摂ってもらって、その考え方を各自で持ち帰り、普段の生活や合宿先で生かしてもらっています。我々は本番の大会でも食のサポートを行ない、そこで出た課題を改善して、また普段の生活に生かしてもらうというサイクルを回しています」

 これが『ビクトリープロジェクト』での具体的なサポートの流れだ。選手側もこの取り組みを高く評価し、自ら学ぼうとする選手も多いという。そのなかでも積極的に食事の改善に取り組み成果を出しているのが、瀬戸だ。

「瀬戸選手の場合は、本人から課題を聞いて、それを奥様と一緒に考えて普段の食事に取り入れています。この瀬戸選手のような活動を何年も前からやっていますが、このようなサポート活動をしているなかで生まれたのが『勝ち飯』です。『勝ち飯』はアスリートだけでなく一般の人にも役立つと考えています」

 この『勝ち飯』の考え方で重要なことは、「何を食べるか」ではなく、「何のために食べるか」ということだ。なりたいカラダ・コンディションになるために必要な栄養素を、スポーツ栄養科学に基づき、「食事」と「補食」でおいしく・手軽に摂取できること。それが、味の素として大切にしている『勝ち飯』の肝の部分だ。

 今では店頭でも見かけるようになった『勝ち飯』は、このような流れとコンセプトで誕生したものだった。これが今では、オリンピック・パラリンピックでも大いに活用されている。

「リオ2016大会のときに、選手村から歩いて5分くらいのところに『G-Road Station』という日本代表選手団専用の食堂を作りました。これはJOCと一緒に行なったサポート活動で、選手村では提供されない食べ慣れた和軽食を食べられる場所です。選手がいつでも来られるようにしました。これを平昌2018大会でもやりました」

 味の素は、『勝ち飯』のコンセプトのもと、各大会で自由に食事のできるスペースを作り、選手村では味わえない和軽食やアスリート用メニューをそろえた。リオで得たアスリートからの高い評価をもとに、平昌ではさらにリラックスルームなども設けるなど、さらに中身を進化させた。東京で実施するとしたら、選手の人数から考えてかなり大掛かりなものができるはずだ。さらに活動はこれだけではない。

「平昌では、アミノバイタルを中心としたアミノ酸ベース顆粒製品を事前に22万本配りました。ほぼ全選手に渡っています。初めて飲む人もいますので、大会3カ月前にお渡しし、ちゃんと自分のコンディションに合わせてもらいました。今回の東京2020大会でも計画しておりますが、22万本どころではないですね」

 味の素にとって企業の認知を上げるためだけで、JOCや東京オリンピック・パラリンピックのパートナーになっているわけではない。アスリートの体づくりに真摯に向き合いサポートすることで、日本スポーツ界の発展を支え、結果的に企業ブランド価値が生まれてきたのだ。ただ現状に満足しているわけではない。味の素の歩みがこの東京からさらに加速していく。

「私がこのプロジェクトに関わるみんなに伝えているのは、東京2020大会はまだオンユアマーク、用意スタートだと言っています。スポーツがありアスリートがいる限り『ビクトリープロジェクト』は続いていきますし、今後は海外でももっと活動の幅を広げていく予定です。まだ提供できる価値はいっぱいあると思っています」

 さらに江崎氏はスポーツと食の未来についての想いを語った。

「スポーツを通じて、食の大切さが世の中の人にわかってもらえたらうれしいなと思っています。トップアスリートが食べているものが特別なものではなく、体づくりを考えて食べているという考え方が浸透していけば、家庭がもっと豊かになるのかなと思っています」

 夏の東京オリンピック・パラリンピックできっと数々の日の丸がセンターポールに上がり、多くのアスリートが全力を出し切って感動のストーリーを紡ぐだろう。その土台の一つに味の素の存在があることは間違いない。


味の素株式会社
オリンピック・パラリンピック推進室
ビクトリープロジェクトグループ長 
江崎貴彦氏

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