2019.11.14

北島康介の2冠よりも驚きだった
柴田亜衣の金メダル「これ五輪だよね」

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by AFLO

 19日午前の予選では、柴田は400mの疲れもあるなかで8分30秒08を記録して3位に入り、決勝進出を決めた。一方、山田は12位で落選。また、前年の世界選手権の400m、800m、1500mの3冠王者だったハンナ・ストックバウアー(ドイツ)が、400m予選敗退から調子を上げられないまま、こちらも14位で落選した。

 これで柴田にもメダルの可能性が見えてきた。とはいえ、さすがに金は厳しそうだった。強豪選手がひしめきあっていたのだ。

 400mで金メダルを獲得していたロール・マナドゥ(フランス)は、800mも予選1位通過で、その強さは本物。さらに4位通過のダイアナ・ムンツ(アメリカ)と5位通過のヤナ・ヘンケ(ドイツ)は、前年の世界選手権でそれぞれ2位と5位で、8分24秒台と23秒台を持っていた。予選を2位通過したレベッカ・クック(イギリス)も、昨年の世界選手権3位の実績を持っていた。

「私はどちらかと言うと大雑把な性格だから、神経質にもならないし、大会も大きくなればなるほど燃えてくるんです。だから五輪も今までの大会でいちばん楽しかったくらい。調子もよかったから『早く泳ぎたい』と言っていたんです」

 柴田が目標にしたのは表彰台だった。決勝前には「隣のレーンのマナドゥ選手は前半から行くだろうなと思っていたので、とりあえず腰か足が見える範囲でついて行って、最後は粘って追いつきたい」と話していた。

 その柴田が、決勝で奇跡を起こした。

 男子100m背泳ぎで銅メダルの森田智巳も、女子200m背泳の中村も決勝は3レーン。メダルが見えた状態でも「日本にとっては演技のいいレーン。私も3レーンだからいけるんじゃないかなと思っていた」という柴田。レースは予想どおりマナドゥが先行する展開になり、最初の200mはジャネット・エバンス(アメリカ)の世界記録(8分16秒22)を上回るペースで入った。柴田も2位をキープして追いかけたが、450m通過ではその差を2秒56まで広げられた。だが、その折り返しから、それまでの50m32秒台のラップタイムを31秒台に上げて、追いあげ始めた。