2019.10.10

シドニーで悲願の銀メダル。
中村真衣を支えた母と同級生の励まし

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • Photo by Jun Tsukida/AFLO SPORT

 それでも、予選は最終第6組で泳ぎ、1分00秒88でゴールして2位に0秒30差をつける1位通過。同日夜の準決勝では全体2位で決勝進出を決めた。だが、16歳のディアナ・モカヌ(ルーマニア)が1分00秒70を出し、強力なライバルとして浮上してきた。

 翌9月18日の決勝。中村は自身の持ち味であるスプリント力を生かし、予選を上回る29秒17で前半の50mを泳いだ。賀慈紅(中国)が当時の世界記録1分00秒16を出した際の前半を0秒37上回るハイペースだ。隣の4レーンを泳ぐモカヌには0秒63差をつける飛び出しだった。

 後半、モカヌが猛烈に追い上げてきたが中村は冷静だった。

「彼女がすごい勢いで追い上げてきているのは見えていたけど、それを気にしないで焦らず、とにかく自分の泳ぎをしようとだけ考えていました」

 ゴール板にタッチしたあと、中村はすぐに電光掲示板を見た。タイムは1分00秒55──。自己新だと確認すると「ヨシッ」と思った。だが次に確認した順位の数字は"2"。「『えっ?』 という感じだった」と苦笑する。後半の50mを30秒41で泳いだモカヌが、五輪記録を0秒40更新する1分00秒21で先着していたのだ。

「悔しさはあったけど、満足していました。もちろん金を狙っていたけど、あの緊張の中で自分のレースができて、しかも自己ベストで......。それは、満足してもいいですよね。アトランタは4位で惜しかったけど、もしあそこで銅メダルを獲っていたら、『メダルって獲れるものなんだ』と思って、気持ちが緩んでしまっていたかもしれません。

 でも、あそこで悔しさを感じて『絶対にメダルを獲るんだ』と思い、メダルを狙いにいった大会がシドニーでした。そこで手にしたメダルだったから、すごくうれしかった」

 アトランタで苦い経験をした中村は、シドニーでは、笑顔で銀メダルを手にした。