【水泳】マイペースな15歳。一気に成長した渡部香生子がロンドン五輪出場へ前進

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 藤田孝夫●撮影 photo by Fujita Takao

日本短水路選手権、200m平泳ぎと100m個人メドレーで2冠の渡部香生子日本短水路選手権、200m平泳ぎと100m個人メドレーで2冠の渡部香生子
 日本短水路選手権2日目の女子200m平泳ぎ決勝は、大会初日の100mと2日目の50mでともに短水路日本新を出して圧勝していた鈴木聡美が優勝候補だった。

 しかし、鈴木は75mのターンの後でまさかの失速。100m過ぎに前日の400m個人メドレーで日本新を出した高橋美帆がトップに立ったが、ラスト25mでその高橋を追い詰め、最後の最後で逆転して2分19秒14で優勝したのは、中学3年の渡部香生子(かなこ)だった。

「去年のW杯で出した2分19秒0台の自己ベストを更新できなかったので少し悔しい」と言う渡部は、前日の100m個人メドレーと合わせて2冠を獲得。

 日本代表チームの上野広治監督は「やっぱり彼女は持ってますね」と目を細める。そして「記録を別にして、勝負でスイッチが入るかどうかだと思っていた。彼女の特性はそういうところにあるので、勝ったことに意味がある」と続けた。

 渡部を指導する麻積隆二コーチは「鈴木さんに前半で2、3秒差をつけられるのはわかっていたので、後半勝負だと思っていた」という。それは渡部も同じだった。

「鈴木さんをあまり意識すると自分のいい泳ぎができなくなるから、意識し過ぎないようにしていました。自分は後半が得意だと思っていたので行けると思っていたし、最後はどうなっているかわからなかったけど、『絶対に一番でゴールする』と思って全力で泳ぎました」と、平然とした表情で話す。

 中3の渡部が一躍注目を集めたのは、昨年5月のジャパンオープン。この大会は、4月の世界選手権代表選手選考会の50mと100m、200mで3冠の鈴木が出場していなかったこともあり、渡部の目標はこの大会で優勝して世界ジュニア代表になることだった。

 ところが結果は予想以上で、シニアの選手を破っての3冠獲得。4月の鈴木の記録を3種目とも上回り、特に200mは2011年の世界ランキング3位になる2分23秒90という好タイムだったのだ。

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