【箱根駅伝2026】國學院大学・青木瑠郁が覚醒した前田康弘監督の言葉「一度、プライドを捨てろ。勝つためのレースをしろ」 (2ページ目)
【涙が出そうなくらいですよ。チームにとっても、本当に大きい】
顔を上げて、すっかり自信にあふれる表情に戻っていた。笑みを浮かべる青木の姿を少し離れたところから眺める前田監督も、頬を緩めていた。1年生から学生3大駅伝の出走メンバーに抜擢し、一度も欠かさずに起用。箱根駅伝では3大会連続で往路を任せるなど、その信頼は揺るぎない。
「全日本では彼本来の走りはできなかったので、『青木はこんなもんじゃない』というところを見せてほしかった。上尾は私から『行くぞ』と言って、エントリーしました。メンタル的な修正を入れて箱根に向かうのが、総合優勝への近道になると思ったので。やっぱり、大事な青木瑠郁は外せませんから」
毎日、練習を身近で見ている指揮官の言葉には熱い思いがにじむ。たとえ、伊勢路で一度外しても、青木の実力を疑う者はチームメイトにもいないという。國學院大の誰もが認めているエース格。上尾のレースに臨む前には、本人にはっきりと伝えた。
「2番じゃ意味がない。勝たないと意味がない。口ではなく、シンプルに青木瑠郁の力を見せてくれ、勝つことがすべてだ、と」
青木は結果をもって、満点回答をしてみせた。期待にしっかり応えてくれた4年生の走りには目を細め、しみじみと話す。
「涙が出そうなくらいですよ。これはチームにとっても、本当に大きい。全日本では本人も悔しかったでしょうが、私たちスタッフも悔しかったんです。上尾では持っている力を普通に出せて、よかった。チームの流れって目に見えないですけど、ここから箱根に向けて、さらによくなっていくと思います」
秋が深まるなか、追い風が吹き始めた。近年、國學院大の鬼門となっている『山区間』のメドも立っているようだ。下級生を中心にきつい練習に取り組んでおり、副主将の青木は励みになる走りができたという。
「"山組"のメンタル向上にもつながると思います」
1時間00分45秒とハーフマラソンの自己ベストを更新した青木は、4大会連続で往路の出走を目指す。かつてとは違う一面も見える。エースの肩書にも、もはやこだわっていない。箱根駅伝の総合優勝から逆算し、不用なプライドを捨てていた。全日本大学駅伝の3区で区間賞を獲得している野中恒亨(3年)の実力を認めた上で、どの区間でも走る準備を整える。
「僕は押していく力もありますし、ラスト勝負もできます。1区から4区のどこに配置されても、区間賞を狙いに行きたい気持ちはあります」
主要区間を走るべき主軸が実力をあらためて証明するなか、上尾では中間層の押し上げも目を引いた。
つづく
著者プロフィール
杉園昌之 (すぎぞの・まさゆき)
1977年生まれ。スポーツ総合出版社の編集兼記者、通信社の記者として働いた後、フリーランスのスポーツライター兼編集者へ。現在はサッカー、ボクシング、陸上競技、野球、五輪競技全般とジャンルを問わずに取材している。
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