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「跳んでる高校2年生」清水空跳が叩き出した100m10秒00の衝撃 元走高跳選手の父からは「『跳躍種目をやってほしい』と言われていましたが...」 (2ページ目)

  • 酒井政人●取材・文 text by Sakai Masato

【16歳、高校2年生が出した10秒00の価値】

 清水は"2年生V"を素直に喜んだが、この快挙にはいくつもの"記録"の肩書きが付随した。

 正式タイムは10秒00(+1.7)。大会記録(10秒11)を楽々と上回ると、今年のインターハイと同じスタジアムで行なわれた2013年の織田記念で桐生祥秀(現・日本生命)が打ち立てた高校記録(10秒01)を12年ぶりに塗り替えた。さらに日本歴代5位タイで、シニアを含めた今季日本ランキングでトップとなる。

 また、クリスチャン・ミラー(米国)とプリポル・ブーンソン(タイ)が2023年に樹立したU18世界記録(10秒06)を0.06秒も更新した。

 とにかく驚きが詰まったタイムとなったのだ。

「3年生で高校記録を塗り替えて、9秒台を出すのが自分のビジョンでした。10秒00というタイムを出せて、あと数㎝のところまで(9秒台に)迫っているんだなという実感が湧いてきましたね。今の僕に9秒台はまだ早い。来季は『いつでも(9秒台を)出せるぞ』という感じでいきたいです」

 清水の公式記録は「10.00」だが、1000分の1まで計測したタイムは「9.995」だった。小数点3位以下は切り上げとなるため、清水は9秒台まであと0.005秒。距離にして5cm届かなかった計算になる。

「本当に高校記録が出てめちゃくちうれしいです」と笑顔を見せた清水。9月に開催される東京世界陸上の参加標準記録(10秒00)にピタリと到達したことを尋ねると、「今、実感しました。出られるなら、その景色を味わいたいですね」と目を輝かせた。

 では、東京世界陸上の日本代表をつかむ可能性はどれぐらいあるのか。

 男子100mの日本代表は最大3枠。日本選手権までに内定条件を満たした者はいなかった。日本陸連が定めた【選考条件】によると、日本選手権8位以内に入った者が優先される。8人のなかで、世界陸連が制定するワールドランキング「Road to Tokyo 25」(ポイント制)でターゲットナンバー(出場枠)48に届く可能性があるのは、日本選手権を制した桐生ぐらいか。有効期間終了の8月24日までに参加標準記録突破者が現れなかった場合、すでに参加標準記録をクリアしているサニブラウンと清水が日本代表に選出されることになる。

 U18世界記録保持者として東京世界陸上に出場すれば、清水は世界から注目を浴びる存在になるだろう。

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