女子100mハードルは陸上日本選手権の最注目競技に 急成長の中島ひとみ、地力アップの福部真子も存在感 (2ページ目)
【2位・中島の遅咲きの輝き】
技術的なことも包み隠さず、みんなで情報を共有していたという100mハードルの選手たちの、心のつながりの深さも見せてくれたレース後の情景。安定した走りを見せ続けている田中の初優勝は意味のあるものだったが、同時に2位の中島の急激な成長、3位に入った日本記録保持者・福部真子のしたたかな強さも印象的だった。
中島と福部はともに29歳。前日に行なわれた予選と準決勝で、最初の予選で強烈な印象を残したのは中島だった。3組に登場すると、向かい風0.2mの条件のなかで日本歴代2位タイの12秒81を出したのだ。
現在、12秒台の自己ベストを持つ7名のなかで、中島は最も遅い昨年9月に12秒99を出した選手。今年は4月の織田記念予選1組で12秒97を出して田中に次ぐ2位になると、田中が右足の違和感で棄権した決勝では追い風1.8mの中で12秒93と記録を伸ばし、清山を0秒01抑えて優勝した。
「日本代表になりたいという意識を持ちながらも、12秒台を出せていないことに大きく引っかかるものがあったが、去年の12秒台が足掛かりになった。そこでスパンと晴れたような気持ちになれ、『絶対に世界陸上に出たい』と思ったし、中学生の頃の『日本一になりたい』と思っていた、燃えるような気持ちを久しぶりに持って冬期練習にも励めた。3月には初めて海外遠征でニュージーランドとオーストラリアに行っていい経験を積むことができました」
こう話す中島は織田ではライバルの存在も念頭に置き、「まだ確実な優勝っていうわけではないことも、自分ではわかっている」と話していた。それでも5月のゴールデングランプリでは、海外の強豪もいるなかで12秒85と田中に次ぐ4位になり、着実なステップアップをしていた。
その進化の要因は、ハードルに向かって踏み切りのタイミングを変えたこととパワーアップだと話す。予選でのハードル間の刻みの走りは、ほかの選手と比べてもキレと力強さは圧倒的だった。織田記念以来の試合ごとの進化を見れば、得意の追い風条件になれば確実に12秒7台に入れる力はつけているといえるだろう。
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