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渡辺康幸が占う箱根駅伝2025 國學院大と「3強」を形成する青学大、駒澤大はどう戦うのか? (2ページ目)

  • 牧野 豊●取材・文 text by Makino Yutaka

【駒大の2区は篠原か? 山川か?】

――ここ数年、往路重視になっている印象です。

渡辺 往路重視自体は、僕が学生時代の頃から変わりはないのですが、特に4区の距離が伸びたことで(*)、その傾向がより強まったという言い方のほうが正確かもしれません。

*2017年・第93回大会から従来の距離から2km強延伸して20.9kmに。これで全10区間が20km以上の区間となった。

 そのなかで3区もかなり重要なポイントになるんですよね。私が監督の時は、大迫傑くん(現Nike)や竹澤健介くん(現摂南大ヘッドコーチ)を使っていたので、ここにエース級が置けるチームは強い。往路の勝負を決する3区、ともいえます。

――前回大会は太田選手と駒大の佐藤圭汰選手(3年)の並走での叩き合いは鮮烈でした。

渡辺 特に湘南の海に出て(12km以降)からの叩き合いで主導権を握ったチームが往路優勝につながっているので、3区に戦力を惜しみなく注ぎ込むことは当然のことだと思います。

――駒大については、いかがですか。佐藤圭汰選手がケガで駅伝シーズンを欠場するなか、篠原倖太朗選手(4年)が主将として、エースとしてチームを引っ張り、前回の箱根では全日本後のケガの影響もあり不完全燃焼に終わった山川拓馬選手(3年)が11月の全日本最終8区で爆走。他校に衝撃を与えたり、駒大強し、を印象づけて箱根を迎えます。

渡辺 駒大については正直、佐藤選手を欠くなかで、こんなにくると思っていませんでした。本当にごめんなさいです(笑)。よくここまできたと感じています。

 ただ、すごく難しいのですが、佐藤選手が箱根に出走した場合、チームとしてどうなるかはまた別の部分はあると思います。

 また、駒大にとって一つのポイントとなるのは、2区だと思います。篠原選手が起用されることが予想されますが、それがハマるかどうか。2区は青学大の黒田選手、國學院大の平林選手と2区の経験者で、強い選手がいる。2区は、特有のアップダウンや最後の「戸塚の壁」と言われる上り坂は、経験がモノを言いますので、篠原選手が初めての2区でどうなるかは、実際に走ってみないと何とも言いようがありません。

――佐藤選手はケガ明けですから3区の可能性が高いですし、なかなか難しいところですね。

渡辺 2区だけを考えるなら、山川選手が向いている印象があります。ただ、チーム全体として考えた時、彼が5区を走ったほうが大きな武器(他校との差をよりつけられる)となります。そうなると2区は篠原選手となる、という考え方です。

 もし仮に山川選手が2区にくるなら、それは上りの適性のある村上響選手(2年、全日本5区区間5位)の調子がよほどいい状態であることを意味しますし、その場合は篠原選手は1、3、4区のいずかになります。

――非常に高いレベルで見れば、駒大は黒田、平林の両選手に対抗できる2区候補がパッと浮かばないとも言えますが、駒大のほかの区間はどのような布陣になりそうですか。

渡辺 1区に桑田駿介選手、谷中晴選手のルーキーいずれかを使うのか。6区は2大会前の伊藤蒼唯選手、前回大会の帰山侑大選手というふたりの3年生が経験者でいます。伊藤選手は全日本の走りから見ても単独走ができるので平地区間、状況によっては往路も任せられる力もあると見ているので、帰山選手を6区で下らせると思っています。

 帰山選手は前回区間12位と思うような結果ではなかったですが、1年前の時点でも下りのチーム内トライアルで一番速かったと聞いているので、調整をしっかりやれれば力を発揮できるのではないかと思います。

――2区が見えているぶん、青学大と國學院大のほうが若干優位と言えるかもしれません。

渡辺 監督からしたら、2区がはっきり決まっているのは楽ですよ。不安要素がなくなるわけですし、選手の状態に応じて、いろんな区間配置が可能となりますので。

第3回(全3回)につづく

⚫︎プロフィール
渡辺康幸(わたなべ・やすゆき)/1973年6月8日生まれ、千葉県出身。市立船橋高-早稲田大-エスビー食品。大学時代は箱根駅伝をはじめ学生三大駅伝、トラックのトップレベルのランナーとして活躍。大学4年時の1995年イェーテボリ世界選手権1万m出場、福岡ユニバーシアードでは10000mで優勝を果たし、実業団1年目の96年にはアトランタ五輪10000m代表に選ばれた。現役引退後、2004年に早大駅伝監督に就任すると、大迫傑が入学した10年度には史上3校目となる大学駅伝三冠を達成。15年4月からは住友電工陸上競技部監督を務める。学生駅伝のテレビ解説、箱根駅伝の中継車解説でもおなじみで、幅広い人脈を生かした情報力、わかりやすく的確な表現力に定評がある。

著者プロフィール

  • 牧野 豊

    牧野 豊 (まきの・ゆたか)

    1970年、東京・神田生まれ。上智大卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。複数の専門誌に携わった後、「Jr.バスケットボール・マガジン」「スイミング・マガジン」「陸上競技マガジン」等5誌の編集長を歴任。NFLスーパーボウル、NBAファイナル、アジア大会、各競技の世界選手権のほか、2012年ロンドン、21年東京と夏季五輪2大会を現地取材。229月に退社し、現在はフリーランスのスポーツ専門編集者&ライターとして活動中。

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