【箱根駅伝2025】駒澤大が上尾ハーフで証明した中間層の底力 谷中晴は力を証明し、帰山侑大は信頼を取り戻す (3ページ目)

  • 杉園昌之●取材・文 text by Sugizono Masayuki

【最終学年で最初の箱根路を目指す吉本】

 表彰式で駒大の入賞者が並ぶなか、複雑な表情を浮かべていたのは7位の吉本真啓。前回の箱根駅伝ではエントリーメンバーに入りながらも出走できず、今年度の伊勢路でもまた補員に。当落線上の4年生にとって、上尾の結果は大きな意味を持つ。顔をしかめてリザルトに目を向けていた。

「悔しいです。入賞できたけど、後輩たちに負けてしまいましたから。メンバー決めのレースだったのに、思うように走れなかった。1時間02分30秒のタイムにも納得できないです。これから合宿があるので、そこでしっかり走りたい」

 これまで、走りたくても走れなかった箱根路。気づけば、最終学年である。藤色の襷への思いは、誰よりも強い。

「学生最後の箱根は絶対に走って、区間賞で優勝に貢献したい。自分の中では9区、10区をイメージしています。9区を走った先輩の山野力さん(現・九電工)、花尾恭介さん(現・トヨタ自動車九州)たちのように4年生としての仕事をしたいです」

 し烈なメンバー争いは、最後の最後まで続く。チーム内の競争を促し続ける藤田監督は、上尾を走り終えた選手たちを集めると、円陣の真ん中で一人ひとりの顔に目を向けて、口を開いた。

「上尾には青学は出場していないし、國學院は主力が走っていないので手放しでは喜べないけど、この結果は自信につながると思っている」

 あらためて、駒澤大の『中間層』と呼ばれる中堅戦力の充実ぶりは目を引いた。指揮官も確かな手応えを得ている。

「4人が入賞し、インパクトを与えることはできたのかなと。計算できる選手層になってきたのは収穫。うちは、青学(青山学院)さんのようにたくさんの選手はいませんので。残り1カ月、この選手層でどこまでつくり込んでいけるか。そこに尽きると思います」

 どれだけ戦力を抱えても、箱根路に出走できるのは10人のみ。駒大は絞り抜いた精鋭を鍛えて、勝負に挑むつもりだ。

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