箱根出場をわずか1秒差で決めた順天堂大 シード権獲得へエース浅井は「本戦で借りを返す」

  • 佐藤俊●取材・文 text by Sato Shun

箱根駅伝予選会を10位で終え、本戦への出場を決めた順天堂大のメンバー photo by KYODO箱根駅伝予選会を10位で終え、本戦への出場を決めた順天堂大のメンバー photo by KYODOこの記事に関連する写真を見る

 箱根駅伝予選会、最終的な結果発表の前から順天堂大の服部壮馬主将(4年)の目は真っ赤だった。
 
 17.4キロの最終観測地点での順大の順位は10位。11位の神奈川大との差は、わずか3秒差だった。その差はあってないようなもの。予選会は、ラスト1.0975キロが勝負と言われているだけに、逆転されてもまったくおかしくはない。

「ギリギリか、ダメか......」

 不安な気持ちと責任の重さに、感情が揺らいだ。

 待機場所のテントの裏には順大の大勢のチームメイトが待っていた。みな、重苦しい空気が流れるなか、その瞬間を待っていた。

 結果発表が始まった。

 1位立教大......次々と予選を突破した大学名が呼ばれる。

 9位神奈川大と呼ばれても、まだ順大の名前は呼ばれていなかった。17.4キロ地点で前にいた東海大も呼ばれていない。諦めかけた瞬間、10位で順大の名前が読み上げられると、「おぉー」「やった」と歓喜の声が上がり、感涙に濡れた。

「ギリギリでしたね(苦笑)。自分自身もみんなも暑さの影響で納得できる走りができなかったので、正直みんな不安だったと思うんです。でも、まぁ最終的に10番になって、いや、もうすごくホッとしました」

 服部主将はまつげを濡らして、そう言った。

 その安堵の涙は、主将の両肩にかかったプレッシャーがいかに大きいものだったのかを表わしていた。

 レース前、長門俊介監督は、選手にこう言い渡した。

「公園に入ってからの15キロすぎからががんばるところだから」

 スタート前から気温が上がり、暑さの影響が出るのは必至だった。それでもレースの展開的は大きく変わらず、「15キロから」を選手たちは頭に入れていた。

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著者プロフィール

  • 佐藤 俊

    佐藤 俊 (さとう・しゅん)

    1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。

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