サニブラウン・ハキームが語った100m準決勝と決勝の雰囲気の違い。メダル獲得には「近いようで遠いイメージ」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Naoki Nishimura/AFLO SPORT

もうひとつ上の舞台へ

 予選からタイムを落とした理由は、予選ほどいいスタートがきれなかったのが一番だと振り返る。そしてこうも分析した。

「いつも練習では、60mからしっかり反発を使って跳ねる感じで走るのをよく120mなどでやっているんです。それをしっかりやっているのが2位になったマービン・ブレイシーや3位のブロメルなので。60mからもスーッと抜けていくので、そういうところを練習どおりか、それ以上できる者が、やっぱり勝つのかなと身に染みて感じました」

 決勝に残ったことで、自分がここまで選んだ道は良かったのだと確認できた。海外の大学に行き、プロになってという道が、本当に正解だったと証明できた。

「100mのメダルは、『近いようで遠いかな』というのが一番のイメージですね。すぐに手が届きそうだけど、その何センチかを縮めるにはすごい練習が必要だし、メンタルやコンディションの調整も必要。その1ミリを縮めるために選手たちはみんな毎日練習に励んでいるので、自分もしっかり1日1日を、本当に1秒1秒を無駄にせずがんばっていきたいです」

 日本陸連の土江寛裕・短距離ディレクターは、「本来ならそこまでの実力は十分備わっている選手なのに、なかなかそこに到達できなかったから、本人もホッとしていると思う」と話す。

2019年世界選手権の100mでは、準決勝でスタート合図の音が聞きづらかったために敗退したが、それがなかったら決勝進出は十分果たせる勢いがあった。そこから3年越しで果たした決勝進出は、昨年の困難を乗り越え、やっと本来の立ち位置に戻ったといえる結果。ここからがサニブラウンにとって、本当の戦いの場になるのだろう。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る