廣中璃梨佳の代表内定が起爆剤となるか。東京五輪1万m女子のレースが面白い (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 日本陸上競技連盟●写真提供

 その後は悔しさでモチベーションも上がらず、足にも痛みが出てしまい、目標を見失う苦しい2カ月間をすごした。しかし、5000mで代表を狙う最後の挑戦となる6月24日からの日本選手権に向けて、スタミナ作りの一環として1万mにも挑戦することを決めた。

 そして、チャンスがあれば2種目での代表を狙うつもりで、4月10日の金栗記念で初の1万mを走り、日本選手権の出場権を獲得。2回目のレースだった今大会で見事に優勝して代表権を獲得した。

 廣中が所属する日本郵政グループの高橋昌彦監督は、今大会の走りについてこう話す。

「1万mに向けた距離走もそれほどやっていなくて、金栗記念の後も1週間追い込んだだけであとは休ませ、7割くらいの状態で(今大会は)臨ませました。それでも30分50秒台は確実に出せる走りはしてくれました。現段階では新谷さんの30分20秒44(を出すの)は厳しいですが、駅伝の走りを見てもそのくらいはいけると思います。今はチームの中でも一番走り込みが少ないくらいなので、そのあたりはこれからだと思います」

 積極的な走りができる廣中が1万m代表に内定したことで、新谷とともに出場する東京五輪女子1万mは、日本勢の入賞の可能性が高くなったと言える。これまで新谷が挑戦していたのは、最初からある程度のハイペースでレースの主導権を握り、先頭集団の人数を早めに絞って上位を狙うという走りだった。それに廣中も参加する展開も可能になる。

 高橋監督もこう期待する。

「(日本)チームとしても以前だったら新谷さんや福士加代子さん(ワコール)がひとりで挑まなければいけない状況だったのが、廣中が入ることでいい意味での刺激もあると思います。暑い中でのレースはスローペースになる可能性もありますが、彼女にとって5000mも出ることになれば、ラストの走りのキレ(スピード)にもいい影響を与える。新谷さんとうまく走れば、96年アトランタ五輪で千葉真子さんと川上優子さんが5位と7位になった時のようなことができるかもしれないですね」

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