箱根の名選手がぶち当たるトラック競技の厳しい現実「世界で勝つしかない」 (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

 田村は大学時代、常勝チームのエースとして、メディアの中心にいた。だが現在、田村が主戦場にしている長距離トラックは、マラソンや短距離と比べると注目度は高くない。そのギャップをどう感じているのだろうか。

「マラソンはMGC(マラソン・グランド・チャンピオンシップ)ができてマスコミの関心が高まり、また大迫(傑)さんが日本記録を出したりして、より注目されるようになりました。短距離もリレーでは五輪でメダルを獲っていますし、100mも9秒台を出す選手が現れて注目度が増しました。その点、トラックの5000mと1万mが注目されないのは、結果から判断すると仕方ないです。世界に通じなければ注目もされないですよ」

 マラソンがレベルアップしたのは個人の努力が一番だ。だが、MGCが設定されるなどマラソンを盛り上げる機運が高まり、日本記録達成者には報奨金として1億円が用意された。それによってマラソンの競技レベルが上がったのは事実である。

「1億円がかかれば、全然違いますよ。明らかにマラソンはそれで変わりましたから。トラック種目も日本記録が出たり、盛り上がってくれば報奨金も考えてくれるでしょうし、そうなればトラックの競技レベルも上がってくると思います」

 田村はいま、トラックの1万mに取り組んでいる。昨年、ドーハの世界陸上の代表選考を兼ねた日本選手権の1万mでは、28分13秒39で初優勝を飾った。ただ参加標準記録(27分40秒00)には届かず、ドーハ行きは逃したが、田村にとっては大きな自信となった。今年12月の日本選手権では東京五輪内定は果たせなかったが、27分28秒92の自己ベストを更新した。そして年が明ければニューイヤー駅伝を走ることになる。

「ほかのチームにはいい選手がたくさんいますし、ニューイヤー駅伝を勝つのは簡単じゃないですよ。どの区間を走るかはあまり気にしないですが、状況はけっこう大事ですね。多少離されても、前が見えるぐらいのところでタスキをもらえれば、モチベーションが上がります。僕は追いかけるのが好きですし、追いかけないと駅伝ではないので(笑)」

 駅伝でどんな走りを見せてくれるのか。「ゲームチェンジャー」の本領を発揮してほしいものだ。

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