3大駅伝を前に東海大3年生が絶好調。悪条件での好走に監督もニヤリ (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

「塩澤はめっちゃ調子がいいですし、トラックも強いんですけど、負けてはいけないと思っていました。正直、勝てたことはよかったんですけど、(塩澤の)転倒がなければというのを考えると、もう少しタイム差をつけて勝ちたかったですね」

 同期のライバルについて語る西田の表情は、さっきとはまるで違い、引き締まっていた。

 一方の塩澤は、9位(29分06秒01)だったが、表情は晴れやかだった。

「高地合宿から下りてきて、呼吸が楽になると思ったんですけど、湿気がきつかった。レース自体は、合宿での疲労が残っているなかでの走りだったんですが、自己ベストを狙っていました。でも、さすがにきつくて思うようにいかなかったですね」

 塩澤は冬(1~3月)のアメリカ合宿の締めとなるスタンフォードでのレース(1万m)で283715の好記録を出した。そして今回のレースでも、中盤までは日本人トップ集団の先頭を走っていた。

 今年フォームを改造してから、美しさとキレが増し、好調を維持している塩澤だが、夏を乗り越えたことでさらに自信を深め、走りに余裕が感じられるようになった。途中で転倒してしまったが、それがなければ間違いなく入賞していたはずだ。

 日本インカレの成績は10月の出雲駅伝、11月の全日本大学駅伝の出走に影響する。

 昨年、日本インカレの5000mで4位に入った西川雄一朗は、出雲駅伝と全日本大学駅伝で1区を走り、箱根駅伝では3区を任された。それだけに、両角監督が「今、一番調子がいいのは塩澤」と太鼓判を押すだけに、秋の駅伝シーズンのキープレーヤーになりそうだ。

 もちろん、本人も十分に自覚している。

「1年の時に全日本だけ走ったけど、昨年はひとつも走れなかった。今年は出雲、全日本、箱根の3つの駅伝をしっかり走ることが目標です。3年間のなかで一番いい流れで来ているので、このまま崩さないようにしていきたいですね」

 塩澤、西田をはじめ、名取燎太、鈴木雄太の3年生カルテットが「非常にいい状態」と両角監督は自信を見せる。3大駅伝は黄金世代の4年生が中心となるメンバー編成が予想されるが、3年生が主力を喰うような力を見せつつある。本番に向けて、期待は膨らむばかりだ。

  『箱根奪取 東海大・スピード世代 結実のとき』

【発売日】2019年10月4日

【発行】集英社

【定価】1,300円(本体)+税

【内容】2019年1月3日──。 往路2位から復路8区の大逆転劇で みごと箱根駅伝初優勝を飾った東海大学。 その“栄光”にいたる道程にあった苦難や葛藤、 当日のレース模様などを 監督、コーチ、選手たちの証言を交えて 鮮やかに描き出す。

そして、「黄金世代」と呼ばれて輝きを放ってきた 現4年生たちが迎える学生最後のシーズン。彼らはどのような決意で箱根連覇に挑むのか。 出雲・全日本も含む3冠獲得を目指し、東海大学の「黄金世代」が駅伝シーズンに向け、再び走り出す 。

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