朝原宣治と伊東浩司。日本男子短距離界のパイオニアが開いた扉 (2ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by PHOTO KISHIMOTO

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 一度フライングがあって「緊張がほぐれた」朝原は、全体2番目のリアクションタイムの0・147秒で飛び出して、中盤は3、4位争い。後半もこれまでの日本選手のように固くなって失速することなく、リラックスしたフォームで走り抜けた。

「1レーンだったこともあり、レースの間は自分の走りに集中して周りはまったく見えなかった」という朝原は、10秒16で5位。4位とは0秒05の僅差で、惜しくも決勝進出を逃した。

「悔しさはけっこうありましたね。『決勝に出られたらな』とも考えました。これが今の実力だけど、後半はそんなに置いていかれなかったので、運が良ければ戦えるなと思いました」

 この時の条件は向かい風0.5m。日本選手権で出した10秒14が追い風0.9mだったことを考えれば、この日の朝原はその記録にほぼ匹敵する走りをしたと言える。さらに、3レースとも向かい風という条件でラウンドごとに記録を伸ばしたことも、これまでの日本選手にはなかった大きな可能性を見せるものだった。

 一方、200mの伊東も、朝原以上のラウンドの進め方をした。

 日本選手権のあとに「20秒29は確実に準決勝まで行ける記録。これまで日本人が果たせていない準決勝進出を実現して、短距離の歴史を作りたい」と話していた伊東だが、レース前には2次予選を壁に感じていたようで、こんなことも話していた。

「200mを走ること自体が、今年は2大会目。日本選手権でも決勝は20秒70とバテた終わり方だったので、調子をつかめなかった。朝原の100m準決勝進出は刺激になったが、『もし僕が1次や2次で落ちたら、予選の日本記録はフロックで、決勝記録が自分の本当の力だと思われてしまう。そんな目には遭いたくなかった』と考えたのが正直なところ」

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