【月報・青学陸上部】箱根V4の裏側。走る選手を見抜く恐るべき眼力 (4ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun photo by Nikkansports/AFLO


「カケハチ男」と原監督が言うように、トレーニングの成果を試合で100%出し切ることができずに80%程度しか発揮できない選手で、出雲と全日本ではメンバー入りさえもしていなかった。だが、世田谷ハーフ、学生1万mの記録会で結果を出し、一気に出場枠を掴み取った。その勢いを箱根につなげられると判断し、起用した原監督の勝負師としての眼力は、畏怖の念さえ覚えるほどだ。

 今回、終わってみれば盤石の強さで4連覇を達成した。

「青学最強伝説」は継続している最中だが、まだ王者たる振る舞いを身につけ、伝統を築くところまでには至っていない。また、今回のチームは原監督と吉永主将との衝突や練習における監督不在への不満が出て、ギクシャクした。その時に間に入ってチームを引っ張り、選手が腹を割って話せる存在が出てこなかったし、食事の改善やメンタルケアなど、取り組むべき課題もまだ多い。

 特に食事は昼食に自分のお金をかけて食べられる選手はいいが、そうではない選手とは体づくりで差が出ている。故障者が出て、復帰が遅くなるのはそうしたことと無縁ではなかろう。そういうことを指摘すると、「しつこい」と嫌な顔をされるのだが、青学がさらに王者として大学陸上界に君臨し続けるためには避けられないテーマだ。箱根駅伝5連覇できるかどうかは、そうした細部にこだわり、胡坐(あぐら)をかくことなくチームをさらに進歩させていく姿勢にあると思う。

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