【月報・青学陸上部】出雲駅伝エントリー発表。レースを走るのは誰か? (2ページ目)

  • 佐藤 俊●文・写真 text & photo by Sato Shun


 春先は吉永自身、キャプテンとしての在り方について原晋監督の考えと合わず、意思疎通がなかなかできなかった。その影響や主力選手に故障者が出るなど、チームの雰囲気はあまり良くなかった。そうした負の流れを夏合宿で一掃できたのは大きい。

「ただ、これから駅伝シーズンに向けての課題というか不安もあります」

 吉永はちょっと困ったような表情で、そう言った。今年の青学には、昨年の一色恭志(ただし)のような絶対的なエースがいない。

 昨年は、一色以外にも4年生には安藤悠哉キャプテン、秋山雄飛、茂木亮太、池田生成(きなり)ら実力を備えた個性派が揃っていた。チームは「一色頼み」の部分もあったが、彼のレースに対する厳しさがチーム内に浸透。刺激を受けた選手が高みを目指して練習に取り組み、学内TT(タイムトライアル)や記録会で結果を出していった。そうして「やれる」という自信を醸成し、それぞれが自分の役割を果たして3冠を達成した。

 だが、今年のチームは"エース不在"という影響もあるのだろうが、例年とちょっと様子が違うというのだ。

「夏合宿のメニューやデータを見ると昨年以上の練習が積めているんですが、それを試合に還元できていない選手がいたり、自分がやってきた練習に対して自信が持てていない選手が多いんです。それはすぐ解決できる問題じゃないんで難しいですね。最初に1本、レースで結果を出せれば、自信を掴むキッカケにはなると思うんですが、そこから駅伝を走るレギュラーを勝ち取れるかどうかはまた別の話になってくる。自分も含めてですが、何とか積み上げてきた練習を自信にうまくつなげていかないとヤバいなっていう危機感があります」

 吉永は厳しい表情で、そう言った。

 練習や努力を結果に結びつけられない――それにはいろいろな理由があると思うが、ひとつは成長する前の停滞期に入っているのではないだろうか。夏合宿で質の高い練習をしているので力はついているが、それが形になって出るまでには個人差がある。すぐに結果を出す選手もいれば、時間がかかる選手もいる。ただ、これから夏の疲れがとれてくれば調子が上がり、合宿の練習量を結果に反映できるようになる可能性が高い。また、今年のチームは「弱い」と言われているだけに、結果を出したいという気持ちが強すぎて、それが力みやプレッシャーとなり、結果に結びつけられていないのではないか。

 もうひとつ、要因のひとつとして考えられるのは、厳しい言い方になるが、目標をきちんと設定し、自分が進むべき方向性や成長を意識して練習に取り組んでこなかったからだろう。

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