世界陸上日本代表で最速タイム、井上大仁が東京マラソンで試したこと (6ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by AFLO

 マラソン強化戦略プロジェクトリーダーを務める瀬古利彦氏は、自らの現役時代について「自分たちは2時間5~6分の練習を常にしていたから、試合で2時間8分台を出せたし、何度も結果を出せた」と話す。井上も、東京マラソンではしっかり準備をした上で、自信を持ってスタートラインに立ち結果を残したものの、海外勢との「勝負」を見据える男に驕(おご)りはない。

「駅伝のような短い距離だったらごまかせるかもしれませんが、マラソンでは自分を過信してもダメだなというのを実感しました。初マラソンが2時間12分台で2回目の東京が2時間8分台と、今のところは着実にやれているなというのがある反面、ここから突き抜けられるのか、もっと上に行くためにはどうしなければいけないのか、という面ではまだ不透明な部分もある。

 本当に大記録を出せるのかとか、ケニア人選手と戦えるのかというのもずっと頭にあって......。ネガティブになるわけではないんですが、日頃の練習をしていても『これでいいのか? これで勝てるのか?』というのはいつも考えています」

 自分の成長に満足せず、足元をしっかり見ながらの前向きな発想。それは、山梨学院大で過ごした4年間で植えつけられたものかもしれない。

(後編に続く)

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