競歩・鈴木雄介「リオ五輪までは、もう記録も優勝も狙わない」

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 築田純●写真 photo by Tsukida Jun

8月特集 リオ五輪まで1年、メダル候補の現在地(9)

「これまでの大会では味わえなかった悔しさを感じた試合でした。数日前までの状態なら痛みがあっても、3位くらいだったら手が届く準備はできていたと思うので、今までにない悔しさでした」と語るのは競歩の鈴木雄介。世界陸上2日目の男子20km競歩に世界記録保持者として出場し、優勝を期待されていたが11km過ぎで棄権した。

現状と向き合い、リオ五輪金メダルへの道を見直した競歩の鈴木雄介現状と向き合い、リオ五輪金メダルへの道を見直した競歩の鈴木雄介「元々は、3月に世界記録を出したあとの不調から恥骨の炎症が起きましたが、最終的なだめ押しはレース2日前の胃痛でした。それから平常時の心拍数もかなり上がってしまい、レースでも10km付近では痛みだけでなく、心拍数もほぼ限界値にまで上がって心肺機能的にも我慢している状態でした。トップ集団はそこからペースを上げるし、このままでは入賞も厳しいと思ったので、ここで無理をしてケガを悪化させるよりきっぱり止めて次へ切り換えた方がいいと判断しました」

 今大会の優勝タイムは想定内の1時間19分14秒。自己記録はさほどでもないが強い選手と注目していたロペス(スペイン)と、最有力と考えていた王鎮(中国)が優勝争いをした。すべてが鈴木の予想通りだったが、ひとつ違ったのはそこに自分が加わっていなかったことだ。だからこそ悔しかった。

「恥骨付近の痛みが出たのは5月の合宿に入る直前でした。痛みを抱えたままでも練習ができる状態だったので、トレーナーさんにマッサージをしてもらえば治るかなという甘い考えで練習を続けていました。でも痛みは取れず、8月になって診察を受けたら恥骨が炎症していると診断されて痛み止めを飲み始めたんです。痛み止めを飲むのは初めてで、最初は効いて痛みも消え、『これなら練習できる』となったけど、中旬ころから動きづらさが強くなってきたんです」

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