【陸上】室伏広治、雨対策も含めてロンドンへ準備着々

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 築田 純/アフロスポーツ●写真 photo by Tsukida Jun/AFLO SPORTS

雨のコンディションでも危なげなく日本選手権を18連覇した室伏広治雨のコンディションでも危なげなく日本選手権を18連覇した室伏広治 だんだんと強くなる、雨の中での戦い。日本選手権初日、6月8日の午後7時から始まった男子ハンマー投げ決勝で、室伏広治は慎重な投てきをした。

 1投目の投てきは若干足もとが滑ったのか、きっちりフィニッシュしないような投げで71m61。2投目はそれを72m72まで伸ばし、3投目は72m85。その時点で2位が67m66だと確認すると、4投目以降の投てきはパスし、他の選手の出方をうかがう体勢に入った。

「トーレ・グスタスフォンコーチから『もう止めた方がいいんじゃないか』とアドバイスされ、4投目からは控えました。雨で気温も低くなり、身体が冷えてしまって支障が出ることもあるので」

 こう話す室伏は、6投目の投てきで2位の野口裕史が71m22まで記録を伸ばしたものの、順位が逆転しないことを確認し、審判に再度試技のパスを伝えて試合を終えた。優勝記録は3回目の『72m85』。彼自身が2連覇を達成した1996年(70m38)に次ぐ低記録ながら、日本選手権の連覇を18に伸ばした。

「記録はあまり良くなかったかもしれないけど、雨だったので無理に記録を狙うこともなかった。それは次の試合にすればいいこと」

 昨年の世界選手権優勝でロンドン五輪代表を内定させている室伏にとって、この大会は『出場しない』という選択肢もあった。だが、日本のファンに競技する姿を見せておきたいという思いや、試合間隔として時期的に出ておくのもいいという考えがあった。さらに天候不順なロンドンでは、試合当日が雨になる可能性もある。そのシミュレーションにもなると考えたからだ。

「雨の中での試合は、なかなか少ない。それを体験し、対策を練るという意味では良かった。シューズメーカーと雨用シューズの打ち合わせもしているので、そのデータも取りたいと思っていたし。いい予行演習になりました」

 今回は記録こそ72m台だったが、これまでの練習の状態からいえば、昨年の日本選手権で記録した『77~78m』は投げられる程度に仕上がっているという。

 世界の記録を見れば、世界選手権3度優勝で北京五輪3位のイワン・ティホン(ベラルーシ)の『82m81』を筆頭に、2011年世界選手権2位のクリスチャン・パルシュ(ハンガリー)が『82m28』で続いている状況。昨年の世界選手権後に室伏は、「来年(2012年)の五輪の優勝記録は、83m台になるだろう」と予言していたが、その通りになりそうな気配だ。だが、それでも室伏は、ライバルの記録に動揺する様子は見せない。

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